コロナの過渡期には、日本へ一時帰国をしたらアメリカへ戻れなくなった方もおられたと思いますが、コロナを経た今、自分の人生の選択肢として「日本への永住帰国」を考えている方もおられると思います。長年アメリカに暮らしアメリカナイズされた日本人にとっては、わが国・日本と言えども、もういちど文化慣習に慣れる期間が必要かもしれません。そんな人は、まずはお試しで日本に少し住んでみるという選択肢もあります。
そこで必ずあがってくるのが、Reentry Permit。米国への再入国許可書です。米国市民権移民局・USCIS (U.S. Citizenship and Immigration Services) の書類で、Form I-131 Application for Travel Documentを指します。
このReentry Permitという書類は、米国永住権者、いわゆるグリーンカード保持者が長期間、基本的には1年以上米国を離れるときに取得するべき再入国許可書です。グリーンカード保持者がアメリカ国外に暮らす場合、米国への確定申告において気を付ける処理がありますが、その際によく質問を受けるのがこの再入国許可書について。本記事では、再入国許可書の最新情報を、各種サイトから得られる情報の要約として紹介します。リンクを参照のうえ、ご自身の具体的な渡航事情に関する相談は、移民法弁護士へコンタクトされることをおすすめします。
再入国許可書(Reentry Permit)とは
再入国許可書は、長期間米国を離れる必要がある米国グリーンカード保持者にとって不可欠な文書です。これは、グリーンカード保持者が 1 年以上米国外に滞在しても永住権を維持する意思があることを示す証拠となります。この許可がない場合、米国を長期間離れると永住権を放棄したと解釈される可能性があります。意図しない永住権放棄が起こると税務上も大変です。米国を長期間離れることが予見される場合は、早めにアクションを起こすことを心がけてください。
現在の待ち時間
需要の増加とUSCIS運用上の遅延により、現在、再入国許可の処理に時間がかかっています。申請者は数か月の待ち時間を覚悟する必要があります。このリンク https://egov.uscis.gov/processing-times/ で待ち時間の確認ができます。今現在、ネブラスカサービスセンターで16カ月です。1年以上というわけですから、渡航間際になって慌ててReentry Permitを申請するような状況ですと、1年以上日本に暮らしてもまだ再入国許可が下りていない可能性を引き起こします。そんな状況で緊急にアメリカに戻らざるを得ない事態が起きたらどうでしょう
生体認証(バイオメトリクス認証)
申請プロセスの一環として、申請者は米国で生体認証の予約に出向く必要があります。これには指紋採取と写真撮影が含まれます。予約はUSCISがスケジュールしており、遅延や申請拒否を避けるためには必ず出席することが重要です。申請後、再入国の許可自体が下りておらず米国を離れても申請には影響ありません。実際に、許可書の受け取りは在外大使館・領事館で可能なのです。
ただ面倒なのは、バイオメトリクスのためにアメリカに戻る必要があることです。バイオメトリクスの予約日としてスケジュールされるのは、申請をしてから約6週間後に設定されるといわれます。この時期にすでに米国を離れている場合、出席のために米国へ戻る必要があります。従って、申請時に在日米国大使館や領事館を許可書受取先に選び、バイオメトリクスを完了してからアメリカを離れ、晴れて受け取りを日本で行うという方法がスムーズのように思えます。東京米国大使館を受領先に選ぶ方はこのリンクで状況確認ができます。https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/immigrant-visas-ja/green-card-ja/maintaining-permanent-resident-status-ja/reentry-permit-status-ja/#theform
再入国許可書の有効期間
再入国許可は通常、最長 2 年間有効です。条件付永住者(結婚後2年以内に米国籍者の配偶者として米国に移住した、投資ビザ等)の場合は2年あるいは条件付き期限のどちらか早いほうで有効期限が来てしまいます。事情により米国留守期間が長くなる場合は、現在の許可証の有効期限が切れる前に新しい許可証を申請することが重要です。
グリーンカードはPermanent Resident Cardというその名称の通り、米国へ永久に居住するためのビザであり、長期間米国を離れることを前提としていません。従って、許可書は更新するというよりも新しく申請する性格のもので、何回まで申請できるかは明確に規定されていません。再入国許可書を何度も申請するほど長期間アメリカを離れてもいつかはアメリカに戻るかもしれないと考える場合、グリーンカード保持以外の選択肢を視野に入れる必要があるかもしれません。
申請に関する5つのポイント
再入国許可書の申請時には、以下の点に留意をしてください。
- 早期申請を心掛けること:処理時間が長いため、渡航計画が決まり次第すぐに申請することが重要です。理想的には、申請は少なくとも 6 か月前に提出する必要があります。
- 書類の完全性に留意すること:Form I-131、パスポート用の写真、永住権の証明など、必要な書類がすべて正しく提出されていることを確認してください。申請が不完全な場合、遅延や拒否につながる可能性があります。
- 自分の永住権タイプを確認すること:自身の永住権のタイプを正しく理解してください。前述の条件付永住者用のように、再入国許可書の有効期限が一般の永住者用とは異なる場合があります。
- 申請状況を確認すること:前述のUSCIS オンライン ポータルを使用して、申請状況をチェックしてください。追加の要件や処理時間の変更について常にアップデート情報を得ることができます。
- 法的アドバイスを受けること:申請に影響する可能性のある不確実性や特定の状況がある場合は、移民弁護士に相談してください。移民法弁護士は、複雑な状況を切り抜け、すべての要件に準拠するための強い味方となります。
米国への再入国時に関する5つのポイント
グリーンカード保持者が米国に戻る際には、以下の点に留意してください。
- 書類完備:再入国許可証、グリーンカード、その他の関連書類を携帯してください。すべての書類が最新かつ有効であることを確認してください。グリーンカード保持者が1年未満または再入国許可証の有効期間内で米国を離れ、米国に再入国する場合、米国行きの便に搭乗するためにはグリーンカードを提示する必要があります。グリーンカードを紛失、破損、または盗難にあった場合、米国行きの飛行機に搭乗するためのボーディング・フォイルを申請することができます。詳しくは、ボーディング・フォイルのページをご覧ください。https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/immigrant-visas-ja/green-card-ja/boarding-foil-ja/
- 税関国境警備局 (CBP/Customs and Border Protection) とのやり取り:CBP 職員に長期不在の理由を説明できるように準備してください。雇用記録、医療記録、その他の関連書類など、海外での長期滞在の理由を裏付ける書類があると便利です。
- グリーンカード維持の意思の証明:米国の住所、銀行口座の維持、米国での税金申告など、米国とのつながりを証明してください。これにより、永住権を維持する意思が常にあったことを証明できます。通常、米国に親族がいること、米国外への留学、または帰国の意思表明では不十分です。
- 継続居住:米国を頻繁にまたは長期間不在にすると、米国市民権の資格に影響する可能性があることを理解してください。米国籍の取得(米国への帰化申請)を計画している方にとって継続居住の要件は重要なのです。
- 法律相談:再入国または永住権の維持について懸念がある場合は、米国に戻る前に法律相談を受けてください。移民弁護士は、個々の状況に応じたガイダンスを提供できます。
おわりに
グリーンカードは米国永住を無条件に保証するものではありません。人生はなかなか自身の計画通りに進まないこともあり、日本にいるご家族の事情、ご自身の人生におこる出来事により、突然アメリカを離れなくてはならない局面があるかもしれません。再入国許可は、長期間米国を離れるグリーンカード保持者にとって重要です。申請プロセスの最新情報と変更を常に把握し、安心して永住権を維持できるようにしてください。移民法弁護士の紹介も可能ですのでご連絡ください。
参考文献
USCIS, International Travel as a Permanent Resident https://www.uscis.gov/green-card/after-we-grant-your-green-card/international-travel-as-a-permanent-resident
在米日本大使館と領事館、永住資格の維持 https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/immigrant-visas-ja/green-card-ja/maintaining-permanent-resident-status-ja/
アメリカを離れるときはReentry Permitの手続きを https://www.cdhcpa.com/ja/thereentrypermitprocesswhenleavingamerica/
在米日本大使館と領事館、再入国許可証 受領状況確認ページ https://jp.usembassy.gov/ja/visas-ja/immigrant-visas-ja/green-card-ja/maintaining-permanent-resident-status-ja/reentry-permit-status-ja/
Check Case Processing Times https://egov.uscis.gov/processing-times/
I-131, Application for Travel Document https://www.uscis.gov/i-131
Instructions for Application for Travel Document https://www.uscis.gov/sites/default/files/document/forms/i-131instr.pdf
I am a permanent resident. How do I get a reentry permit? https://www.uscis.gov/sites/default/files/document/guides/B5en.pdf
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