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現在グリーンカードの取得を計画されている人のために、取得の覚悟とは何か? グリーンカードの取得のメリットとは何かを説明しました。覚悟の部分は主に税務面からの考慮で、移民法の分野については言及していません。グリーンカードの方が持つ移民法上の権利に関しては必ず専門の弁護士の方にご相談ください。
1.全世界課税、資産開示
この義務があるために、グリーンカードを取得する資金があるのに敢えてグリーンカードを取得しない人が多数いるのをご存じですか?
グリーンカードを取得することは、米国に居住していなくても米国の居住者で居続けることを意味します。米国の居住者で居続けることは、米国のIRSに全世界であなたが獲得したすべての所得を開示する義務があり、逆の言い方をすれば米国政府には全世界の所得に課税する権利を与えているのです。
この自らの義務とIRSに与える権利が嫌で、家族にはグリーンカードを持たせて、自身はグリーンカードを取得しない人がいるのです。EB-5というビザでは、そういう傾向が見られます。
もちろんEやLのビザの方も米国居住者であり、グリーンカード保持者と同じ権利と義務があるのですが、これらの方は日本に戻れば、自動的に米国居住者ではなくなり、これらの権利義務は消失します。永住権を取得することは、これらの権利義務が永住権を放棄しないかぎりなくならないというのが覚悟になります。
不動産などは開示の対象にはなりませんが、金融資産と呼ばれるものは開示対象です。銀行名、口座番号、最高残高、住所など金融資産の開示が主に二種類のフォームで行われます。FBARと通称されるものと、Form 8938です。
忘れてはいけないのが、海外企業の株式所有の開示義務です。海外企業の株式を 10%以上保有している場合は、開示義務があり、50%以上持っている場合は課税対象になり得ます。同族で会社を保有されている方は注意が必要です。
2.出国税
永住権を8年以上保有していており、次の3点のひとつでもクリアすると出国税の対象になる可能性があります。難しい説明は省きます。以下の点を理解してから、グリーンカードを取得するか否かを決めましょう。特に将来日本に帰国を予定している人で、アメリカでビジネスを行う人は心してほしいと思います。
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- グリーンカードの放棄時に純資産が、ひとりで200万ドル以上ある
- 過去5年間の連邦政府に支払った税額が平均で一定の数値を超える(毎年金額が変わります)
- 過去5年間で連邦政府の税法を順守していると宣言できる
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このひとつでもクリアした場合は、Covered Expatriate(該当する出国者)となります。その場合は次の3つの種類の税金がかかる可能性があります。
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- 出国税(グリーンカードの放棄時に未実現のキャピタルゲイン対象一定の控除額以上にキャピタルゲイン税として課税)
- 401(k)の源泉税30%(日米租税条約の恩典が受けることができず、日米双方で課税されます)
- IRAがグリーンカードに通常所得として全額課税
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3. メリットリスト
グリーンカードのメリットは、一番は就労の自由です。私自身もカードを取得して一年以内に職を変えました。さらに5年以上の保持をしていれば、米国市民権獲得の道が開けます。私自身もこの方法で、米国市民権を得ることができました。米国市民と結婚されている場合は、この期間が3年に短縮されます。市民権を所得できれば、陪審義務が生じてときどき裁判所に陪審員として出頭することがありますが、あまり負担になるほどの義務ではないと、個人的には感じます。
最後に市民権を取得すると、参政権を得て、選挙ができます。さらに家族の永住権申請ができます。いわゆる家族を呼び寄せて、家族で米国に移住してしまうこともできるわけです。
これらのメリットはとても重要で、いわゆるアメリカンドリームを追い求める基盤ができるわけです。個人的なことですが、私自身もグリーンカードを得たことで、アメリカでの人生が大きく開けました。もちろんその前のH-1での勤務時代にそのあとの自分の仕事の基礎を築けたというのが大きなメリットでもありました。
私が説明するまでもなく、読者はこれらのメリットについては熟知されているでしょう。しかし覚悟の面では知らない人が多いのが残念ながら現実なのです。ぜひ、この記事の皆様の人生に多大な影響を与えるグリーンカードの取得時に考慮してください。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
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