会計上では「見積り」という概念が存在することはご存じでしょうか?会計というとすべてにおいてルールが存在していてそのルールに基づいて財務諸表が作成されるため常に正しい答えがあると考えられているかもしれません。しかし実際には会社の経営者が数字を見積る必要があることが多々あります。今回は「見積り」についてご説明したいと思います。

商品を仕入れたり、売ったり、入出金がある場合は請求書や入出金の金額通りを記帳することになり金額を見積り必要はありません。しかし、会計処理をしていく上で主に固定資産の耐用年数、売掛金の回収可能性、在庫の価値減少、製品保証費用、賞与等未払費用のような見積りが必要となります。こちらでは主に固定資産の耐用年数、売掛金、在庫及び未払費用について述べていきたいと思います。

固定資産の耐用年数

固定資産の減価償却を計算するに際して耐用年数を決定する必要があります。米国会計基準では耐用年数は主に下記を考慮する必要があるとされています。

  • テクノロジーの変化
  • 固定資産の劣化具合
  • 固定資産の使用状況

こちらをご覧になっていただければわかりますように具体的な耐用年数が規定されているわけではありません。会社がどれくらいその固定資産を使うことができるか、使用状況はどうか?ということを考慮して決めることになり経営者側の「見積り」が必要になってきます。後日この見積りが変更になった際は見積りの変更として帳簿を調整することになります。例えば機械使用開始時は10年と見積もっていた耐用年数が機械の摩耗が激しいため2年後には残り5年しか使えないと見積もりが変更になったとします。この場合、残存価額を残り5年で償却することになります。減価償却費は会社の経費に影響を与えますので会社で妥当な償却期間を見積もる必要があります。

売掛金の回収可能性

売掛金の回収が危ぶまれる場合は貸倒引当金を計上する必要があります。回収可能性は過去の支払い履歴、顧客の経営状況、現在の景気等を考慮して検討する必要があります。これらを考慮して引当金を計算することなりますが、実際にどれだけ回収されるかは計算をしている段階ではわかりませんので「見積り」となります。また、引当金の計算方法は米国会計基準で規定されているわけでなく、一般によく使われる方法を紹介しているのみとなっています(売上に対して数パーセントの引当金を計上する、等)。引当金の計上は会社会社の業績に影響を与えますので社内でどのように見積るべきかを検討しておく必要があります。なお、引当金を計上しても実際に入金がある場合等もあるかと思います。その際は入金時に引当金を戻す処理をすることが可能です。

在庫引当金

会計上では保有している在庫のうちダメージを受けているもの、陳腐化したもの、また売れ行き芳しくないものがある場合には引当金を計上する必要があります。ただ、米国会計基準では具体的な引当金の計算方法が規定されているわけでなく会社で計算方法を決める必要があります。具体的な例としては1年以上売上がない商品を、半年以上売れていない商品は50%を引き当てる、などがあります。ただ比較的新しい商品でも注文が来ないことが確定した場合等は引当金を計上する必要がありますので会社が現況をよく鑑みて合理的に引当金を見積もる必要があります。また、例え引当金として計上されている商品であっても翌年になってよく売れるということもあります。その場合は翌年引当金を戻すことが可能です。引当金の計算は見積りになりますので実際の売れ行きと差異が発生しても特に問題はありませんが合理的な方法で見積もる必要があります。

未払費用

会計上では未払費用は貸借対照表日以前に発生したがまだ支払っていない費用と定義されています。発生主義では締めまでに請求がきていない輸送費は関税、光熱費やその他費用、また発生したがまだ支払っていない給与や賞与も未払費用として計上する必要があります。請求書が来ていませんので会社でどれくらい請求が来るかを見積る必要があります。見積り方ですが、前月分の請求書と同等の金額を計上する、また過去の履歴をみて平均の金額を見積る、また実際に仕入先に連絡を取って概算額を聞く、等の方法があります。また、未払給与は未払となっている給与の日数を割り出し、翌月に支払われた給与を日割り計算して未払部分を計算することになります。賞与の場合は決算時では確定していないことが多いと思われますが、会社の財務状況と前年度の支払い実績を基に合理的に計算する必要があります。

ご質問のございます方はお気軽にCDH会計事務所の中尾([email protected])までお問い合わせください。

会計上、見積りに関する数字を計算するのは難しく、経営者の判断が必要になります。また、監査上では見積りが妥当であるかどうかが焦点となる需要事項です。会計上の見積りに関するご質問のある方はお気軽に中尾[email protected]までお問い合わせください。