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年末が近づいてきましたね。税務申告のこともそろそろ心配になってこられる時期ですね。今回は医療費控除額を最大にする方法について、説明します。
1.損金算入できる費用項目
以下の項目が控除の対象になります:
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- 個人負担の健康保険のプレミアム
- メディケアB,C,Dなどのプレミアム
- 歯医者の費用
- カイロプラクターなどの費用
- 眼医者、眼鏡の費用
- 医療治療を受けるために発生した交通費
- その他
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このリストはこれだけでは終わりません。詳しくはIRSが出しているPublication 502[1]を参考にしてください。非常に詳しく説明されています。
私が読者に注意を喚起したいポイントはいくつかございます。
2020年度で損金算入できる医療費控除のマイレージは17セントです。[2] 日本に治療のために行き、その際に発生した飛行機代などの移動費用は、損金算入できます。ただし純粋に旅行の目的が医療治療の場合です。米国でもできる治療を日本に休暇がてら帰って、日本で治療を受けるのでは、損金に認められないと思います。次に健康保険、HSA,FSAなどから払い戻された費用は損金算入できません。
さらにクレジットカードにチャージされた金額は、支払いをされたと判断されて損金算入できます。逆に歯医者から請求が来て、まだ支払っていない場合は、損金算入ができません。ここは税務プランニングができる分野であり、後述します。
2.AGIのリミット(フロアー)
本年度も医療費の控除はAGI (Adjusted Gross Income)と呼ばれる金額の7.5%を超える金額です。AGIと言うとなじみがあまりありませんので、去年の税務申告書のライン8bを見ていただくとご自身の昨年度のAGIがわかります。その数字を見ながら2020年度の金額をご自身で予想されて、その金額の7.5%を計算すれば、2020年度のフロアー予想値がわかります。2020年度にこのフロアーを超える金額が項目別控除を取れるわけです。
3.ケーススタディ
2020年のAGIが$150,000とします。また以下の医療費が発生したと仮定します。
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- 健康保険の自己負担 $3,500
- 歯医者(請求書だけ来ており、まだ支払いをしていない)$3,500
- カイロプラクター $1,000
- 眼医者と眼鏡 $2,000
- 医療を受けるためにかかった旅費 $3,000
上記合計で$13,000
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このケースの場合は、AGIの7.5%は、$11,250です。次に医療費を合計すると$13,000になります。したがって控除できるのは差額の$1,750です。
次にご自身のその他の項目別控除(Itemized Deduction)を予想します。上記の$1,750を加えた予想項目別控除額が2020年の標準控除額[3]を超えるのであれば、最大の損金算入になります。そしてその次のアクションとしては、上記の歯医者の請求書を年内に支払います。この支払はクレジットカードにチャージされることで目的を達成します。支払いを行わないと損金算入できません。
もし他の項目別控除が標準控除(Standard Deduction)より少ないという予想になるのであれば、歯医者の支払いを翌年にします。これで翌年に項目別控除を最大にして、税金を減らせるチャンスを最大限にするのです。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。
[1] https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/p502.pdf
[2] https://www.irs.gov/tax-professionals/standard-mileage-rates
[3] https://www.irs.gov/newsroom/irs-provides-tax-inflation-adjustments-for-tax-year-2020