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現時点での日本の法律では、自己の志望による外国籍取得にもとづく日本国籍の喪失(外国への帰化など自己の志望により外国国籍を取得した日本人は、外国国籍を取得した時から日本国籍を喪失します。実際には、本人に日本国籍を放棄する意思がなくても、自動的に日本国籍を喪失します。[1]

この記事では、米国の永住権者が日本への永久帰国時に、米国市民権を取得した場合の米国税務での影響を、変わらない点、メリット、デメリットの3つの側面から説明します。

  • 変わらない点

多くの方が疑問に思われる点ですが、米国で獲得したソーシャルセキュリティ、アニュイティ(個人年金、IRA、401(k)、生命保険の受取り自体は、日本に住む場合は、国籍の変更は影響を与えない点です。この点は米国税法という枠を超えていますが、常識として知っておいて欲しいと思います。米国の銀行口座で受け取ることになるかもしれませんが、受け取り自体に問題はないと思います。

次に、永住権を維持していた居住期間と同じように、米国税務の納税、報告義務は日本に戻ってからも継続します。この点は、日本に帰国して永住権を放棄した場合に、米国への納税、報告義務がなくなるのとは対照的です。

  • メリット

米国税務上での大きなメリットは二つあります。

第一は、米国の生涯非課税枠を、米国の贈与税、遺産税上で日本に住んでいても利用できるというものです。金額も巨額で2023年度で$12.92 Millionあります。米国税務では、贈与をする側、遺産を残す側が課税対象ですので、その身分でこの枠を使えます。贈与や、遺産を受ける側の身分、間がらは、次に述べるポイントを除いて関係ありません。

日本に帰国して永住権を放棄した場合は、この生涯非課税枠は使用できなくなります。

第二は、夫婦間の贈与、相続の資産移動時に受け取る側がUnlimited Marital Deductionという非課税制度を利用できます。夫婦間の移動で米国市民の配偶者が受ける側に回った場合には、米国の贈与税、相続税は一切かからないわけです。例えば、米国にある不動産を、日本人の配偶者が、米国人の配偶者に贈与しても米国では一切贈与税がかかりません。

上記の例で、日本人の配偶者が、米国の不動産を受取った場合は、米国の贈与税が発生します。ここで注意してもらいたいのは、この場合は贈与した側が米国市民の場合は、第一の生涯非課税枠は使える点です。

この記事では日米相続税条約の影響については言及しておりません。また、Domicile(定住者)の定義に関しても言及しておりません。米国永住権を維持しながらこの記事で記述されているメリットを享受できる方もいると思います。詳しくは個別にお問合せください。

  • デメリット

「納税義務の衝突」が発生します。米国は市民権を維持している場合は、納税義務が継続するので、日本に居住する場合は、日米の双方に全世界所得を報告、納税をする。日本は市民権などにはかかわらず居住が納税義務を決定します。

IRSに対して「納税義務」だけでなく、「報告義務」もあることを忘れないでください。海外金融口座、海外企業の株式所有、海外信託の所有などが該当します。忘れると大きな罰金を課せられてしまいます。

次に日本で労務所得が発生する場合は、米国へのSocial Security(Employment)とSelf Employment Tax(自営業)の場合に二重課税を防ぐための社会保障協定下のCertificate of Coverage(適用証明書)の利用が必要になります。大前提として米国市民は、Social Security税・セルフエンプロイメント税の支払い義務がありますが、日米の社会保障協定により二重課税を避ける方法があります。適用証明書(Certificate of Coverage)を取得して、保管しておくことが義務づけられています。[2]

以上が米国市民権取得による米国税務への影響のまとめです。この記事では米国の税務面以外についての言及はできるだけ避けています。それだけ複雑で、多岐にわたるのだとご理解していただけるようにお願いします。

[1] 「重国籍と日本の国籍法」国際法学会ーhttps://jsil.jp/archives/expert/2016-12

[2] https://www.ssa.gov/international/Agreement_Pamphlets/japan.html#certificate2

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。また、お読みになる時点ではすでにルールが変更されているリスクもあります。最新のルールは、下記よりお問合せください。また実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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