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日本に帰国して永住権を放棄すれば、米国の非居住者になります。日米租税条約で年金等の課税は居住国で課税されれば良いことになりますので、このような人は、米国で401(k)を日本に滞在しているときに引き出して、米国の税金を支払わない選択ができます。

最初から説明しましょう。米国に居住している間は、いわゆる通常の401(k)は一度も所得税がかかっていない資産になります。米国の税制は、59歳半を過ぎてこの資金を引き出した場合は全額通常の所得税率で課税されます。その背景はこうです。引退後の所得は低くなっており、累進税率制度の米国の低い税率を利用できる見込みがあるからです。ちなみに現在の米国の累進税率は10%から37%です。

永住権を放棄して、日本に帰国した場合は、前述の通りに日本の居住者になり、401(k)の引き出しは日本での課税になります。さてここから以降の説明は、日本の税理士の資格をもっていない筆者が調べた結果に過ぎない点を頭に入れておきながら、Skepticalな態度で読んでください。

この説明の基準になる文献は、こちらのリンクからです。以下この文献を私なりに安易な文章にしてみました。

    • 米国の401(k)年金は日本では「不適格退職年金」として扱われ、生命保険年金に係る 一時金などと同様に一時所得として課税される。
    • 従業員のContributionと会社のマッチング部分の金額は、一時所得を得るために支出した金額として所得金額の計算上控除できる。つまり401(k)の総額からこのふたつの拠出部分を引くことができる

次に計算方法についても見ていきましょう。

国税庁のリンクを見ていると次の数式が目につきます。

 

(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除額) × 50%  退職所得の金額

 

個人のContributionと会社のマッチングは上記の所得控除額です。401(k)の総額からこれらの数次を引いて、その数字に50%を掛けています。つまり控除後の半額だけが課税対象になるということです。

米国と日本の税率を簡単に比較することはできませんし、筆者が日本の税務の専門家でない点からも、この文章ではあまり変化はないと仮定しましょう。それでも、日本の税額が低くなるのは、(1)控除できる金額がある、(2)課税対象が半額になる という事実で明白です。

注意点:

読者の人には以下のポイントをしっかり注意してもらいたいと思います。

    • 文献は退職金を「一時金」で受け取る場合の日本の課税とあります。
    • 実務上、自身の401(k)のコントリビューション、会社のマッチング、投資部分がいくらなのかを分離して表示してくれるリポートがあるのか疑問です。米国では全額課税なので、分離する理由がないからだと思います。
    • 他の所得が存在している場合は、全体の税額に影響がでます。問題点を抽出して説明した議論だということを理解してください。
    • 米国の金融機関のなかには、日米租税条約にかかわらず401(k)の引き出し時は一律30% 源泉する機関もあります。
    • この記事で書かれていることがIRAでも適用されるかに関してはこの記事では言及していません。

結論:

少なくとも401(k)を一時金として一度に引き出すのであれば、日本で、日本の居住者になってから引き出したほうが、二倍くらいは有利になるように思えます。

ご自身が、このような選択肢を迫られている方は、ぜひ弊社にご連絡ください。日米の401(k)受け取りのシミュレーションをいたします。もちろん日本での税額は、しっかりした日本の税金の資格を保持している国際税務の専門家に依頼します。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。