お客様各位、

米国時間2017年12月22日にトランプ大統領によって米国税制改正法案が署名されました。この改正法案は185ページにおよび、各納税者に様々な影響を及ぼす大規模な改正となっております。下記では新税制の中から特に個人税務、法人税務、国際税務に焦点を当て概要をまとめました。

この記事ではお客様にとって即時的および長期的な影響に注目しており、お客様の状況によって影響が異なる事がございます。お客様へ直接影響する条項に関するご説明については当事務所までご連絡ください。ご不明な点がございましたらお気軽にCDHチームメンバーにお問い合わせください。

 

 

米国税制改革概要

 

個人税務

税率

個人所得税率は変更になります。新税率は概要の最後に添付されているテーブルをご参照ください。

パススルー所得に対する控除

2018年1月1日から2025年12月31日の間に開始する課税年度において、個人納税者は個人事業主所得・パススルー事業体所得から国内適格事業所得の20%を控除することができ、控除はその事業体のW-2給与額の50%が限度となります。エステイトやトラストもこの控除の対象となります。

別な計算として、W-2給与額の25%に当該事業所の固定資産のベースを足す方法もあります。ほかにも申告資格や状況に応じて制限が生じますのでご注意ください。

チャイルドタックスクレジット

改正法ではチャイルドタックスクレジットが増額され、総所得が夫婦合算申告の場合$400,000、その他の場合$200,000以下であれば最大$2,000の税額控除が認められます。

 

 

教育費

改正法では529プランにおいて現行法では含まれなかった小中学校に関連する費用に対しても最大$10,000まで非課税で引き出しが可能です。

離婚後の生活手当

2018年1月1日以降に成立した離婚や別居に関しては、相手方に支払う離婚後の生活手当が、支払う側の課税所得から控除できなくなります。また改正法では離婚や別居後の生活手当としての支払いは所得に含まれません。

引越し費用

2025年まで引越し費用控除は廃止されます。軍の指令による軍人の転居は唯一の例外として控除が適用となります。

主たる住居の販売

主たる住居の売却に対する非課税特例については現行法から変更なしとなっています。現行法では、主たる住居を売却する時、譲渡直前の5年間中最低2年間その住居に居住していた場合に売却益の最大で$500,000(夫婦合算申告の場合)が非課税となります。

人的控除

人的控除は2025年まで廃止されます。

標準所得控除額

2018年から2025年まで、標準所得控除額は下記の通りに増額されます。

 

単身者:                       $12,000

夫婦合算申告:        $24,000

特別世帯主:             $18,000

 

項目別所得控除

・住宅取得借入金利息

現行法では、融資が住宅取得借入金もしくは適格住宅(主たる住居およびセカンドレジデンス)を担保にした住宅担保ローンである場合、住宅取得借入金利息は項目別控除の一つとして認められ、上限として住宅取得借入金$1,000,000(夫婦個別申告の場合$500,000)、住宅担保ローン$100,000(夫婦個別申告の場合$50,000)の借入金利息が控除できました。

改正法においては、2018年1月1日から2025年12月31日の間に開始する課税年度では控除の対象となる住宅取得借入金限度額が$750,000(夫婦個別申告の場合$375,000)と引き下げられます。2017年12月14日以前に発生した住宅取得借入金についてはこの限度額の引き下げは適用となりません。そのため2017年12月14日以前に住宅を取得している場合は借入金の$1,000,000までの利息控除が可能です。

・州/地方税

新条項では、固定資産税、州税、地方税の合計額に対して$10,000までの控除限度額が設定されます。

・寄付金

改正法では、公共慈善団体への寄付の控除上限が所得の50%から60%へと変更されます。

・雑損失項目

2%制限が適用される雑損失項目が2025年まで廃止されます。

・医療費

2017年および2018年は医療費の閾値が7.5%となります。

・代替ミニマム税

改正法においては、2018年から2026年まで個人所得税の代替ミニマム税の控除額が増えます。代替ミニマム税は元来すべての納税者、特に高額所得納税者より最低額の連邦所得税を確保するために制定されました。代替ミニマム税は減税優遇措置を利用して通常の所得税を極端に低く計算した場合に、通常の税額に加算されて課税されます。

別途計算された試算ミニマム税額と通常の所得税額を比べた際の超過額がその年度に支払うべき代替ミニマム税となります。試算ミニマム税の計算には、通常の課税所得額に調整項目と租税特別項目を加算・減算して代替ミニマム課税所得を算出し、その額から代替ミニマム控除額を差し引きます。代替ミニマム税控除は代替ミニマム課税所得が一定額以上になると逓減します。

代替ミニマム課税所得から代替ミニマム控除を差し引き、代替ミニマム税率を掛けて得られた額が試算ミニマム税額となります。代替ミニマム税課税所得額が代替ミニマム税控除額以下の場合は、代替ミニマム税は発生しません。

改正法では代替ミニマム税控除額と控除が消滅する閾値が暫定的に引き上げられます。

2018年より代替ミニマム税控除額は以下のとおりとなります。

 

$109,400 夫婦合算申告、生存配偶者

$70,300 単身者、特別世帯主

$54,700 夫婦個別申告(夫婦合算申告の50%)

 

 

法人税務

法人税率

2018年1月1日より法人所得税率は一律21%に引き下げられます。会計年度末によって、新旧税率の加重平均により適用税率を算出します。

法人代替ミニマム税

改正法では廃止となります。

減価償却

1. ボーナス減価償却 - 2017年9月28日以降、2022年12月31日までに取得及び事業供用された適格資産の100%をボーナス減価償却できます。適格資産には加速度減価償却のもとで償却年数20年以下の固定資産が含まれます。2023年以降は、ボーナス減価償却率が下記の図のとおり引き下げられます。

現行法では、ボーナス減価償却は新品が対象で購入年度のみ可能となっていましたが、改正法では新品・中古品の両方が対象となります。

2.自動車減価償却制限 - 改正法では、該当する資産(自動車)の減価償却額が増額されます。2018年1月1日以降に取得および事業供用された乗用車は、ボーナス減価償却を含め最大で下記の金額を控除申告できます。

3.内国歳入法179条 - 改正法においては最大で$1,000,000までの即時償却が認められます。ただし、取得額が$2,500,000を超えると即時償却は逓減され、税法上の所得による制限もあります。

 

支払利子

改正法では支払利子の控除制度が改訂され、控除金額を次の項目の合計に限定しています。

・事業上の受取利子

・調整後課税所得の30%(減価償却含まず)

・一定の資産購入にかかる支払利子(販売用および在庫を担保にした自動車購入に対する 借入金)

また、直近3年間の平均売上が$25,000,000以下の会社についてはこの制限は適用されません。

繰越欠損金

改正法においては、繰越欠損金の2年間の繰り戻し還付が廃止される一方、20年に制限されていた繰越が無期限となります。また、2018年1月1日以降に開始する課税年度において生じる欠損金については控除が課税所得額の80%に制限されます。2017年12月31日以前に開始した課税年度において生じる欠損金についてはこの制限は適用されません。

等価交換

改正法においては等価交換の適用は不動産のみに限定されます。

国内製造控除

改正法では廃止されます。

接待費

改正法においては次の経費控除は認められません。

・接待、娯楽、レクレーションとみなされる活動

・接待、ビジネス、社交のためのメンバーシップ費用

・上記に関連する施設の費用

ビジネスのために必要な飲食費(出張時の食事等)や会社のカフェテリア施設などを通して少額の福利として従業員に提供する飲食費の50%は従来通り控除が可能ですが、2026年1月1日以降は控除不可となります。

交通費/通勤費

2018年1月1日以降に生じたもしくは支払った交通費手当(社有バンでのカープール、定期代、駐車場代)は経費控除ができません。また、2018年以降に生じた交通手段や通勤費の支給は、従業員の安全上の必要時を例外として、すべて経費控除は認められません。

 

国際税務

Transition Tax

米国税制は海外子会社(CFC)を有する企業に対し、テリトリアル課税制度を採り入れます。この制度においては、1986年以降の海外留保所得の2017年11月7日もしくは2017年12月31日時点におけるいずれか高い額が強制みなし配当課税の対象となる累積海外留保所得となります。Subpart F所得として計算された額に対し、現金は15.5%それ以外は8%の税率で課税され、Subpart F所得に対する税額は8年間にわたる分割納付が可能となります。海外子会社(CFC)が支払った外国法人所得税についても外国税控除は可能ですが、強制みなし配当として課税された部分に限定されます。

海外子会社(CFC)配当金

上記の手続きが完了した後、米国法人は海外子会社(CFC)が米国法人株主に支払った受取配当金の控除を受けることができるようになります。

 

 

 

個人税税率

 

 

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