ストックオプションには基本的に法定(適格)と非法定(非適格)の2つのタイプがあります。
従業員株式購入プランまたは報償型のインセンティブストックオプション(ISO)プランに基づいて付与されるオプションは、法定ストックオプションです。
従業員の株式購入プランにも報償型のISOプランにも基づいて付与されていないストックオプションは、法定ではないストックオプションです。
法定ストックオプション(Statutory Stock Options)
ストックオプションとは雇用主が自社株を一定の期間内に定められた行使価格で購入できる権利を従業員に与えることです。雇用主が法定ストックオプションの権利を付与した場合、またはオプションの権利を行使して株式を取得する時には収入とは見做されず課税されることはありません。但し、報償型のISOを行使する年に代替ミニマム税が課せられる場合があります。詳細については、Form 6251の説明を参照してください。
オプションを行使して購入した株式を売却すると、課税所得または控除可能な損失が発生し,キャピタルゲインまたはキャピタルロスとして扱われます。ただし、特別保有期間(Holding Period)の要件を満たしていない場合は、売却による利益の一部を通常所得として扱う必要があります。この通常所得として扱われる金額は株式の売却による利益または損失を決定する際の株式のBasisに加算されます。
https://www.irs.gov/forms-pubs/about-form-6251
報償型ストックオプション(Incentive Stock Options, ISO)
売却時に以下の2つの条件を共に満たす場合は、長期キャピタルゲインとして扱われます。
- 特別保有期間(Holding Period)が過ぎてから売却
- 株式を取得して1年以上が経ってから売却
キャピタルゲイン=売却価額-権利行使価額
一方で、上記の条件を満たさないで売却し、利益が生じた場合は、権利行使日の市場価値までは通常所得として扱われます。
通常所得=権利行使日の市場価値-権利行使価額
キャピタルゲイン=売却価額-権利行使日の市場価値
ISOを行使した後、第422(b)に基づくインセンティブストックオプションの行使の書類Form 3921を雇用主から受け取る必要があります。このFormは確定申告に報告すべきキャピタルゲインと通常所得の正しい金額を決定するために必要な書類です。
https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f3921.pdf
従業員株式購入プラン(Employee Stock Purchase Plans, ESPPs)
従業員は一定の割引価格で自社株を購入できます。このプランでは報償型ストックオプション同様、購入権の付与ならびに権利の行使時点では課税はされません。但し売却時には、購入時の割引分は通常所得として課税の対象になります。
通常所得=権利行使日の市場価値-権利行使価額
キャピタルゲイン=売却価額-権利行使日の市場価値
従業員株式購入計画に基づいて付与されたオプションを行使して取得した株式の最初の譲渡または売却後、第423(c)に基づく従業員株式購入計画を通じて取得した株式の譲渡に関する書類Form 3922を雇用主から受け取る必要があります。このFormは確定申告に報告すべきキャピタルゲインと通常所得の正しい金額を決定するために必要な書類です。
https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/f3922.pdf
譲渡制限付株式ユニット(Restricted Stock Units, RSU)
制限付株式ユニットは、エンロンやワールドコムなどの企業が関与する2000年代半ばの会計スキャンダルが明るみに出た後、ストックオプションのより良い代替手段として従業員報酬の一形態として広く取り入れられるようになりました。
長く会社にいてもらいたい雇用主側が考えた、従業員向けのインセンティブの一つで、権利の付与から数年後に、対象者に自己都合によって退職しない等の一定の要件を満たすことを条件に、自己株式処分により自社の株式を付与する制度です。ストックオプションとの大きな違いは購入権ではなく予めプランで定められた株式を定期的に従業員に支給することです。
制限付株式ユニットにも権利付与、そして権利の確定という流れがあります。権利が確定するとその株を従業員は受け取り、その株の市場価値が通常の勤労所得と同じように課税されます。
雇用主は勤労所得の対価として支払うので、通常の給与支払と同様に源泉徴収義務があります。多くの場合は、権利が確定した一部の株を、権利確定時に雇用主が市場で売ることで、源泉税を支払うようです。
つまり1,000株の権利を得ることができた時点で、雇用主は200株を市場に販売して、その対価で従業員側負担の源泉税を支払い、従業員は800株を受けとるわけです。これらの数字はW-2に含まれています。
尚、IRSは権利確定まではRSUを有形資産とは見做しておらず、原則的には権利付与時に所得税を前払いするIRC Section 83(b)の選択をする事はできません。IRC Section 83(i) Qualified Equity Grantsの選択など非常に複雑ですので必ず専門家にご相談ください。
非法定ストックオプション(Nonstatutory Stock Options)
雇用主があなたに非法定ストックオプションを付与した場合、含める収入の額とそれを申告するタイミングは、オプションの公正市場価値を容易に決定できるかどうかによって異なります。またVesting periodが定められている場合もあります。
容易に決定される公正市場価値
オプションが確立された市場で活発に取引されている場合、オプションの公正市場価値を容易に決定できます。オプションの公正市場価値を容易に決定できるその他の状況、および容易に決定可能な公正市場価値を持つオプションは付与時にオプションの時価が給与として通常所得の税率で課税されます。また、もし支払いがあればその差額を通常所得として申告します。
容易に決定されない公正市場価値
ほとんどの非法定オプションには、容易に決定可能な公正市場価値がありません。容易に決定できる公正市場価値のない非法定オプションの場合、オプションが付与されたときに課税対象となることはありません。
オプションを行使するときに、行使時に受け取った株式の公正市場価値から支払額を差し引いたものを通常所得に含める必要があります。
売却時のキャピタルゲイン=売却価額-権利行使日の市場価値
Vesting periodが定められている場合
Vesting Periodという特定制限付き非法定ストックオプションの場合、オプションを行使するときに、Code Section 83(b)を選択することにより行使時に受け取った株式の公正市場価値から支払額を差し引いたものを通常所得に含める選択をすることが出来ます。
この選択をした場合には、30日以内にIRSに通知をしないといけないルールになっています。またもちろん雇用主にも通知をしないといけません。雇用主に通知をすることで、Vesting Period終了後には所得税がかかりません。株価が権利付与時より上昇している場合などには節税することが出来ます。
ストックオプションの課税や特定の情報およびレポート要件については、Publication 525を参照してください。
https://www.irs.gov/forms-pubs/about-publication-525
参考までに:
日本での税制適格ストックオプションに関する課税は米国の報償型ストックオプションと同様に売却時に課税されます。申告分離課税で譲渡益に対して所得税15%と住民税が課せられます。
<Case 1>
米国籍を保有するAは、5年間の予定で米国法人B社の日本支店で勤務していましたが、今般期間満了とともに帰国しました。Aは、日本支店に勤務して1年後にB社からストックオプションを付与されており、帰国して1年後に権利行使しています。この場合の課税関係(国内源泉所得の範囲及び源泉徴収の要否)はどうなるでしょうか。
回答は下記のサイトをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/06/48.htm
<Case 2>
国内勤務時に付与された税制適格ストックオプションを、米国勤務(非居住者)となってから適格に行使しました。米国支店に出向中のこの社員が日本の本社の税制適格ストックオプションを行使して取得した株式を米国滞在中に売却した場合、日本での課税はどうなるのでしょうか。
下記のサイトをご参照ください。
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/02/34.htm
以上
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