居住者の方は標準控除か項目別控除の金額の多い方を選択し、課税対象所得を減らす事ができます。但し非居住者や二重身分者の方は、標準控除を選ぶ事ができません。また、夫婦個別申告でどちらかが項目別控除を選んだ場合は二人とも項目別控除を選ばなければなりません。申告者が盲目や 65 歳を過ぎた場合は、追加控除ができます。

<人的控除・扶養者控除について>

2018 年度より、納税者自身と配偶者に対する人的控除や、税法上認められた子供や両親等の扶養家族に対する扶養者控除はなりました。

 

  • 標準控除

2022年度標準控除額>

  • 夫婦合算及び寡夫・寡婦申告 $25,900
  • 特定世帯主 $19,400
  • 独身者 $12,950
  • 夫婦個別申告 $12,950

 

  • 項目別控除

医療費>  

  • 医療保険料、介護保険料、診察料、費用の払い戻しを受けていない治療費
  • 眼鏡、コンタクトレンズ、処方箋による薬代
  • 治療を受けるための交通費(個人車を利用の場合は2022年6月30日までは$0.18,

7月1日より $0.22/ マイル)、駐車料金、高速料金

  • 義歯、ブリッジ、インプラント、松葉杖、車椅子、盲導犬、ほか

※但し、調整後総所得の 7.5% を超えた分のみ控除の対象となります。

<州税および地方税>  

州及び市町村所得税か売上税、不動産税、固定資産税、動産税が対象となります。

但し上限があり上記税額の合計が $10,000 まで(夫婦個別申告では $5,000 まで)となります。

  • 連邦所得税やソーシャルセキュリティ税、高齢者医療保険税、関税、交通違反の罰金やライセンスフィーは控除対象とはなりません。
  • 2018 年より米国外で支払われた不動産税や固定資産税は、控除の対象とはなりません。
  • 日本での源泉徴収支払分は外国税として、別途控除可能です。

 

<利子>

2017年12月15日以降に発生した借入金は$750,000(夫婦個別申告では$375,000)まで、それ以前は$1,000,000(夫婦個別申告では$500,000)までのの適格住宅取得ローン利子、純投資利益の範囲内での投資関連利子が対象となります。但し、

  • 車のローンやクレジットカードの利子、滞納税に対する利子は対象とはなりません。
  • 純投資利益を超過した支払い利子は、無期限で繰り延べ可能です。

なお、教育ローンの支払い利子は項目別控除ではなく所得調整控除の対象となります。金額は $2,500 まで、2021 年度の夫婦合算申告の場合ですと調整後所得が $140,000 から減額され $170,000 でゼロとなります。

<慈善寄付>

IRS から認可を受けている慈善団体、教育・科学・文化団体、宗教団体等適格団体への寄付が対象となります。

  • 現金や支払小切手の場合は受取書が必要で、特に $250 以上の場合は必ず受取書又は確認状を入手してください。
  • 現金以外の寄付で $500 を超える場合は、確定申告書に Form 8283を添付する必か要があります。
  • 慈善活動への交通費としては $0.14/ マイル、そして駐車料金、高速料金が認められています。 現金の場合は調整後所得の100%までなど、寄付の内容や寄付先によって控除限度額がありますが、5 年間の繰越が可能です。

尚、カナダやメキシコを除く米国外、例えば日本への慈善団体へ直接寄付されても、控除の対称にはなりませんのでご注意ください。例えば、「赤十字」に募金をする場合、日本の赤十字に募金をしても、控除対象となりませんが、米国の Red Cross への募金は控除対象となります。

<災害・盗難損失>

火災、洪水、事故、盗難等による所有財産の損失に対する控除です。

  • 連邦政府が認めた災害の場合、例えば家屋、ガレージ、車での損失は一件につき$100 を差し引いた金額の合計が調整後総所得の 10% を超えた分のみ対象となります。
  • Form 4684にて報告しForm 1040に添付して申告します。 

<その他>

その他に対象となる項目としては下記のとおりです。

  • ギャンブル所得を上限とするギャンブル損失
  • 身体障害に関する業務上の費用
  • 個人の所得に関連する相続税
  • 自宅内を事務所として使用した場合の経費
  • 証券取引法違反となるポンジータイプの投資詐欺による損失、ほか。

 

  • ビジネス経費

2017 年の税法改正により、従業員を対象とした項目別控除における調整後所得の 2% を超えるビジネス経費の控除は、出来なくなりました。自営業としてビジネスを展開されている方は、Schedule C にてその収支報告にビジネス経費を計上することができます。

  • バケーションホームの費用

バケーションホームを個人でも使用していて、自分が使用していない間は賃貸している場合は、ローンの支払金利や不動産税等の費用は個人使用と賃貸使用に案分し、個人使用分は項目別控除、賃貸分は賃貸収入に掛かる経費として分けて申告します。

もし個人使用の日数が、総賃貸日数の 10% か 14 日の多い方より多く、実際の賃貸日数が 15 日より少ない場合は、個人使用の住居として賃貸による収入を報告する必要はありません。

ローンの支払金利や不動産税は、項目別控除で申告します。但し、もし実際の賃貸日数が 15 日を超える場合は、ローンの支払金利や不動産税等の費用は個人使用と賃貸使用に案分し、項目別控除と賃貸収入に掛かる経費として分けて申告します。

  • 減価償却

上記賃貸物件としての住居は、減価償却でき、その費用も経費として計上できます。米国内の住居は 27.5 年、日本など米国外の住居は 30 年の償却となります。

土地代は償却の対象とはなりませんのでご注意ください。

  • 離婚の慰謝料と養育費

2018 年以前の離婚による慰謝料の支払いは、支払い側は所得から控除ができて、逆に受け取り側は課税対象所得として申告しなければなりません。しかし 2018 年以降の離婚による慰謝料に関しては支払い側の控除はなくなり、受け取り側も所得としての申告は不要となりました。

子女の養育費に関しては、支払い側の控除はなく、受け取り側も課税対象所得として申請する必要はありません。

  • 引越し費用

2018 年度の税法改正により引越し費用の控除は軍の関係者を除き出来なくなりました 。

  • Health Saving Account

高額自己負担健康保険、High Deductible Health Plan (HDHP) に加入している方のみが対象で、非課税で積立ができ、金融機関で開設できる口座です。メディケア加入者や普通の健康保険に加入されている方は対象になりません。

2022 年度の非課税拠出額は個人で $3,650、家族で $7,300。55 歳を超えると $1,000 増額となります。従業員が拠出してもよいですし、雇用主が拠出しても Form W-2 には記載されますが、従業員には非課税となり、社会保険税の対象にもなりません。

この口座からの医療費関係の支払いは非課税ですが、それ以外の支払いに充当された分は所得に含まれて課税対象となり、別途 20% のペナルティが課せられます。但し、死亡時や障害者と認定された場合、または 65 歳以降はペナルティが免除されます。

以上

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