連邦個人所得税法では、個人に、標準控除額を超える総所得がある場合には、その個人が確定申告を行う義務があります。また申告義務がなくても、所得税の還付が見込まれる場合には、確定申告により還付請求を行うことができます。居住者の方は申告年度中の全ての全世界所得を申告しなければなりません。
<Form W-2, Form 1099 等>
米国で会社より支払われる給与はもちろん、住宅補助や教育費補助、社用車の個人使用分、そして確定申告書作成費用や見込み納税等も納税者に代わり会社が支払えば、個人の所得となります。
また、日本で支払われる給与やボーナス、退職金、留守宅手当、一時帰国手当や引越し手当、賃貸料相当額を会社が払っている場合や、日本だと課税対象とならない借上げ社宅の補助額等も、米国では課税対象となります。
企業年金・厚生年金、失業保険等の受け取り、ギャンブル収入や賞金等の受け取りがあれば、それらも忘れないで申告するように注意が必要です。
以前は、慰謝料の受け取りも所得とされていたのですが、2018 年 12月 31 日以降に同意された離婚の慰謝料に関しては、支払側は所得から控除できず、受取側は所得として申告する必要はなくなりました。
米国金融機関や投資機関からの利子・配当所得に対しては、それらの機関より Form 1099 やステートメントが送られてきます。同様のものがIRS にも送られていますので、申告漏れのないようご注意ください。 日本の銀行からの受取利息は、通常 20.315% の源泉税が徴収された税引後の金額が通帳に記載されていますので、税引前の金額(総受取額)に直してから申告してください。 源泉徴収分は、外国払所得税として外国税額控除の対象となります。
その他の事業所得がある場合は Schedule C での申告が必要です。
<家賃収入>
日本の持ち家等からの賃貸収入や米国にて所有する賃貸物件からの収入も、Schedule E で申告しなければなりません。
<日本の親からの相続・贈与>
相続・贈与は、所得税の対象にはなりません。日本に住む親は米国非居住者であり、その非居住者から米国外にある資産を相続したり受贈したりしても、米国の相続税や贈与税の対象にはなりません。
但し、その年度に相続を受けたり受贈したりした金額の合計が 10 万ドルを超える場合は、下記の Form 3520 を提出し報告しなければなりません。
Annual Return to Report Transactions with Foreign Trusts and Receipt of Certain Foreign Gifts on Form 3520 <海外信託の年次報告及び米国非居住者からの贈与の報告義務について>
米国市民、永住権保持者および居住者が、当該年度にアメリカ非居住者から一定額以上の財産の贈与や相続を受けた場合は、別途 Form 3520 を確定申告提出期日までに IRS に提出しなければなりません。
- 非居住者の個人又は海外の信託から贈与や相続として $100,000 以上を受領した場合
- または海外法人やパートナーシップから贈与として$16,649 以上を受領した場合
この報告義務を怠ると $10,000 と、
- 海外の信託から受領した場合はその受領額の 35%、
- 海外の信託が米国居住者の所有となった場合はその資産額の5%、
- 海外で受領した受贈額又は相続額の 25%、
これらのいずれか高い方が罰金として課されます。
米国非居住者である日本在住のご両親から日本にある現金や株式・家屋等を受贈・相続した場合、日本で贈与税や相続税の申告をしなければなりません。 日米相続税条約では相続・贈与に関わる相続人・被相続人及び贈与者・受贈者の居住国、又、その財産の所在地により、国際的二重課税を避けるための対応策が取られています。
米国非居住者から米国外にある財産を受け取る場合は、贈与税や相続税の申告は必要なく、収入に含める必要もありません。 但し、前述のように受贈額や相続した財産の市場価額が 10 万ドルを超える場合は、Form 3520 を IRS に提出しなければなりません。この Formは開示報告のみであり、受領金額によって課税されることはありません。
<確定申告が必要となる所得額>
確定申告義務が発生する所得額は、納税者と配偶者が居住者であるか非居住者であるかにより異なります。例として下記に記載のある額以上の所得がある場合は、確定申告義務が発生します。(2021年度の数字であくまでも参考です)
1) 居住者
- 65 歳未満の居住者で夫婦合算申告(夫婦のみ):$25,100
- 夫婦個別申告:$5(もし配偶者が項目別控除を取ると、納税者も標準控除はとれません。)
- 65 歳未満の独身者:$12,550
2) 非居住者
- 米国で事業をしている
- 金額にかかわらず源泉徴収されていない米国源泉所得がある
- 一定の租税条約の恩恵を享受している。
3) お子様の収入
下記のいずれかに該当する場合は別途確定申告をする義務があります。
- ①投資所得が $1,100 以上
- ②給与・チップ等の稼得収入と課税対象となる奨学金等の合計が$12,550 以上
- ③上記①と②の合計金額が、②の稼得収入(但し$12,200まで)に$350を加えた金額か$1,100 の大きい方を超える場合
ただし年度末で 19 歳未満か、もしくは 24 歳未満のフルタイムの学生である場合は、所得が投資所得のみか、総所得が $11,000 未満であればForm 8814により両親の所得として申告する選択も可能です。
詳細は下記のサイトをご参照ください。
https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/p501.pdf
以上
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