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今は、多くの方が自発的に他の国の国籍を取得すると、自動的に自身の日本国籍が消滅する日本の国籍法の取り決めを知っています。しかし、4,5年前までは、それを知らない人が数多くいたと思います。また、そのころは、日本政府もあまり二重国籍について、厳しく言わないような状況があったのかもしれません。そんな背景もあり、今、「二重国籍」の人が数多く存在すると聞いております。もちろん、ある一定の条件を満たせば、合法的に二重国籍を取得できる人もおります。
今回は、米国籍を取得してしまった人たちの気持ちを代弁して、合法、非合法の両方の維持補法の観点から、「後悔」にはどんなものがあるのかについて、会計士である私なりに考えてみました。税金関連の説明は、文章の一部になります。今、米国籍を取得しようと考えている方のための一助となるべく書いてみました。
1, 後悔―その一
自分の話です。私が米国籍を取得したのは今から15年くらい前になります。喪失後ほどなくして、父を亡くし、相続の関連で日本の戸籍を離脱して、日本のパスポートも無くしました。実家の市役所で手続きを完了しました。
やはり一番の後悔は、「祖国を捨てた」という自責の念です。自分の決断は間違っていなかったと今でも確信していますが、自分の心は、日本人の心であり、自分の故郷は日本であることは、米国に住めば住むほど感じることです。多くの方は、この「心」の理由から、米国籍を取らないのでしょう。
2, 後悔―その二
私が行っている無料相談にたまに国籍の問題で相談に来られるかたがおります。自分の専門外であることをはっきり断わったうえでお話しを聞いていると、日本で口座を開けるときに米国人、つまり外国人として登録させられる、投資口座を開けるときにも同様で、外国人としての登録を求められるのに抵抗を持たれる方が多いようです。投資口座で投資活動をすることに一定の制限があるようです。
3, 後悔―その三
逆に税金の面で後悔をする人を私はあまり見かけません。それは永住者と米国籍で米国の税制が殆ど同じで、違いがないからだと思います。最も大きな違いは、夫婦間の資産の移動が受け取り側が米国市民であると無制限に資産の移動ができるというUnlimited Marital Deductionという制度です。しかし、この制度もある種の信託(トラスト)を作成することで、問題を避けることができます。少なくとも2021年の時点では、市民権を取得したら、これができないなどの税務上の大きな後悔はないと考えることができます。しかしこちらは米国遺産税の生涯の非課税枠が大きく下げることになると変わってきます。
4, 後悔―その四
米国籍は家内も取得したのですが、コロナ禍で外国人に入国に対して日本政府は大変注意をしています。家内はお父さんの看護で二度コロナ禍のなかで日本に帰国しました。そのために日本の領事館でビザ(査証)を取得する必要があり、お父さんの看護の重要性について、お父さんの主治医に手紙を書いてもらわないといけなくなりました。大きな後悔ではありませんが、このようなことも、他の国籍を持つことのコストのひとつでしょう。
5, 本当の後悔とは
実は本当の後悔で一番よく聞くのは、「二重国籍は大きな問題がない」と、昔簡単に判断されて、今でも日本のパスポートと米国のパスポートを使い分けている人達が持つ後悔の念ではないでしょうか? 明らかな国籍法の違反であり、自身の犯している違法行為にびくびくされているのが本音でしょう。そのような人は、もう公に自分は二重国籍を持っていると言えないでしょうし、いままで自身の日本国籍が消失していたのにも関わらず、日本人としてふるまっていたことに自責の念を感じるのでしょう。この種の相談を私は何度か受けました。決まってこれらの人たちが心配されるのが、見つかった場合の罰則であり、判明したときの問題点です。
最近、日本のパスポートの更新の際に、「他の国籍をお持ちですか」という質問を必ず聞かれるそうです。ここでまた「嘘」をつかない限り新しい日本のパスポートは取得できないわけです。
このような方には、私は、正直に日本政府に連絡して、国籍離脱などの手段を取ることを勧めたいと思います。(もちろん弁護士や、日本の領事館など直接この分野に責任をもって説明してくれるところと真剣に相談されるのが一番重要です。)
6, 筆者の勧め
どんな決定をされるのにせよ、国籍とは税金の問題だけで決めるべき問題ではないし、政府が無視しているから(現在は、しっかり違法性を広報活動されていると思いますが)、で決めるような簡単な問題でもありません。税金面でも得をするなどのことはないと考えるべきでしょう。
自分の生き方や、家族の生き方に大きな影響を与える一大決定であり、慎重に、じっくりと決定をしていただきたいと思います。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
なおこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。