コロナウイルスの感染拡大における会計上の留意点-売掛金と棚卸資産

7/28/2020

コロナウイルスの感染拡大は世界中のビジネスや経済に多大な影響を与えております。この影響が今後いつまで継続するか不透明である中、本稿では多くの企業における会計上の留意点となる、売掛金及び棚卸資産に与える影響について説明いたします。

売掛金の回収可能性

現在の経済活動の停滞に伴い、多く企業において貸倒引当金の見積りの計算方法の再検討が必要となる可能性が生じております。これはこれまで支払いに問題がなかった顧客が突如資金繰り問題に直面し、支払い能力が低下しているようなケースが生じているため、従来のような過去の貸倒実績を基に貸倒引当額を見積もる方法が適切とならない可能性があるということを意味しております。そのため売掛金が回収可能であるかどうかを個別に再評価する必要があります。場合によっては一部回収や支払期限の延長等の対応に迫られることが考えられますが、最終的に回収不能と判断されたときには損失が計上されることとなります。

              支払期限の延長に応じる場合は、別の会計上の論点が生じる可能性があります。それは支払期限を延長することで、その契約が重大な金融要素を含むと考えられるケースを指します。契約に重大な金融要素が含まれるケースとは、支払期限が延長されることで顧客が与信という形で重大な便益を受けていると看做される場合、その便益に相当する金額を貨幣の時間価値分を調整した上で、当初の取引価格において調整する処理が必要となります。

棚卸資産の評価

棚卸資産の評価について以下3つのポイントを考慮する必要があります。

  1. 低価法の適用

米国会計基準において、棚卸資産は低価法(取得原価又は正味実現可能価額の低い方)にて評価されることが要求されています。昨今の経済情勢を踏まえ、多くの企業において棚卸資産の販売及び利用可能性に棄損が生じていないか再検討する必要が生じています。もし棚卸資産の販売価格が低下し、将来の損失が見込まれる棚卸資産がある際は、該当する品目の評価減を行う必要があります。季節性の影響が大きい又は貯蔵期間の短い等の品目を多く抱えている場合は特に大きなリスクとなり得る可能性があります。

  1. 過剰在庫による評価引当金

売上の鈍化に伴い、棚卸資産の滞留及び陳腐化にかかる評価引当金の見積りを再検討する必要が生じています。また、受注のキャンセル等により販売の見込みが著しく低下し、且つ他の顧客への販売も困難な商品については直ちに損失を計上する必要があります。

  1. 製造原価計算

米国会計基準において、製造にかかる変動間接費は実際の使用量に応じて仕掛品及び完成品へ配賦される必要があります。一方で、固定間接費は標準使用量に応じて配賦されます。配賦率は実際の使用量が標準使用量を超えた際に再計算する必要がありますが、生産設備の予期せぬ停止等により生産量が顕著に低下した場合には、製造にかかる間接費は期間費用として発生した時点で費用処理され、棚卸資産へ配賦することはできなくなります。

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