教育に伴う費用に関しては、前々回のNewsletterで説明させていただいた項目別控除で申請する学生ローンの支払い利子控除の他にも、教育費税額控除、教育貯蓄口座の非課税分配金、そして項目別控除で申請する所得控除があります。税額控除を受けた場合は同時に授業料の所得控除を申請することは出来ません。しかし、教育貯蓄口座からの非課税分配金の対象としなかった適格教育費用やQTPでカバーできなかった適格教育費用は税額控除の対象にすることができます。
教育費税額控除 (Education Tax Credit)
<米国機会税額控除:American Opportunity Credit>
学位取得のために在学する4年間の大学の授業料について最高$2,500までの税額が控除される制度です。
- この場合最初の $2,000 までは 100%、次の $2,000 までは 25% が適用されます。
- 条件として最低年度中 5か月以上学生 (Full-time Student) であること。
- 但し、こちらも調整後総所得の制限を受け、2022年度ですと夫婦合算申告の場合で $160,000 から段階的に減額され $180,000 でゼロとなります。
- 夫婦個別申告の場合はこの税額控除は認められません。
<生涯学習税額控除:Lifetime Learning Credit>
学位や年数に関係なく専門学校、大学や大学院の学費について最高$2,000までの税額控除が認められます。
- $10,000 までの適格費用の 20 %、最高額は $2,000 の控除です。
- こちらは学生 (Full-time Student) である必要はなく、どの科目の授業料であっても対象となります。
- 但しこちらも、調整後総所得の制限を受け、夫婦合算申告の場合 2022年度では $160,000 から段階的に減額され $180,000 でゼロとなります。
- 同一人物が米国機会税額控除と両方同じ年に申請することは出来ません。
- 夫婦個別申告の場合はこの税額控除は認められません。
教育貯蓄口座 (Coverdell ESA: Coverdell Education Savings Accounts)
Coverdell教育貯蓄口座(Coverdell ESA)は、Education IRAとも呼ばれ、口座の指定された受益者に適格な教育費を支払うためだけに米国で設立された信託または保管口座です。Coverdell ESAを設定するための主な要件は次の通りです。
- 口座開設時にCoverdell ESAとして指定する必要があります。
- 口座開設時の指定された受益者は18歳未満であるか、特別支援受益者である必要があります。
- 口座の開設および管理するドキュメントは書面である必要があり、特定の要件を満たしている必要があります。
<拠出金>
- 拠出は現金で行う必要があり、所得から控除することはできません。
- 修正調整総所得がその課税年度に設定された制限を下回っている個人は、拠出を行うことができます。 (2022年度は個人申告者が$110,000、夫婦合算申告者は$220,000未満)
- 企業や信託などの組織も、調整後の総収入に関係なく拠出できます。
- 拠出者は、納税申告書の期日までに拠出する必要があります(延長は含まれません)。
- 特定の受取人のために開設できるアカウントの数に制限はありません。 ただし、どの年においても、一人の受益者に対する拠出金の合計が2,000ドルを超えることはできません。
<分配金>
- Coverdell ESAの指定された受益者は、適格な教育費を支払うために非課税の分配金を受け取ることができます。
- 分配金は、分配金の額が受益者の適格な教育費を超えない限り非課税です。
- 分配金が受益者の適格な教育費を超える場合、収益の一部は受益者に課税されます。
- 口座に残っている金額は、指定された受益者が30歳に達した後、30日以内に分配する必要があります。ただし、受益者が特別支援受益者である場合を除きます。
- 受益者が30歳になる前に死亡した場合、口座に残っている金額は死亡日から30日以内に分配されなければなりません。
- 兄弟のCoverdell ESAに残金を譲渡することも可能です。
- 分配金を受け取った各Coverdell ESAから、フォーム1099-Q (Payments from Qualified Education Programs (Under Sections 529 and 530))が翌年の1月31日までに送られてきます。
参考:https://www.irs.gov/taxtopics/tc310
QTP (Qualified Tuition Programs): 529 Education Savings Plan
529 Planは、Coverdell ESAと同様に拠出時の節税効果はありませんが、収益は繰延されて適格な教育費の支払いに対しては非課税となります。
州は適格な教育機関で学生の適格な教育費を支払うための前払いまたは口座への拠出を可能にするプログラムを確立および維持している場合があります。
- TCJA (Tax Cuts and Jobs Act)はこの529 Planに修正を加えています。
- 529のプランからの分配金で小学校または中等学校(K-12)の公立、私立、または宗教学校で、受益者1人あたり毎年合計10,000ドルの授業料を支払うことができます。
- 同じ年の同じ子供のためにCoverdell ESAと529 Planに拠出することができますが合計で、年間贈与税の非課税額を超えることはできません。
50州すべてとコロンビア特別区がこの529 Planを後援しています。詳しくはそれぞれの州や大学に直接お問い合わせください。
項目別控除による所得控除
最後の所得控除は勤務先の会社(雇用主)のために支出する教育費の支払いで、会社からの支給額または払戻額を超える金額が調整後所得の2%を超える部分を項目別控除で申請出来ましたが、Tax Cuts and Jobs Act of 2017(TCJA)により2018年から2025年度までは申請できなくなりました。
以上
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