日本政府は海外に住む日本人のマイナンバーカード(通称「マイナカード」)を日本の在外公館で交付・更新できるようにし、マイナカードを失効せずに持ち続けられる法改正を2024年5月までに施行するのに合わせ、在留邦人の多い都市から順次体制を整える、というニュースは、クロスボーダー人にとっては関心のあるトピックだと思います。そして、ちょうどこの記事を書いている前日の2023年3月29日、デジタル庁により「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤 抜本改善ワーキンググループ」が開催されました。
マイナカードと健康保険証、運転免許証の一体化
日本では、このマイナカードと健康保険証の一体化「マイナンバー保険証」により、紙の健康保険証は2024年秋を目途に廃止の予定、また、運転免許証との一体化「マイナンバー運転免許証」開始は2024年末とされています。クロスボーダー人の中で住民票を抜いていない人は健康保険証をお持ちだと思いますが、転出届を出して住民票を抜くと、健康保険証は返却しなければなりません。つまり、現在、海外在留邦人は健康保険証は保持することが出来ません。
一方、運転免許証の場合、今現在、転出届を出して海外在留邦人となっても保持することが可能であり、一時帰国時は一時的な住所を使って免許更新も可能です。また、運転免許証を本人確認の身分証明書として利用することも多いでしょう。
本人確認資料の行方
ここに一つの考察が入ります。住民票を抜いている海外在留邦人が、在外公館で公布された「マイナンバー運転免許証」を交付される場合、そのカードに記載される住所はその海外の住所であると考えられます。従い、日本でのクレジットカードの加入や携帯電話の購入といった本人確認を伴う手続きが困難になるかもしれないとの展望を持つ人は、こうした手続きを今のうちに済ませようと行動しているとも聞きます。付随して、加入時の手続きだけでなく、これからの毎月支払いの銀行引き落としに使う口座の維持すら難しくなると考える人もいると思われます。
本人確認としてパスポート・日本国旅券も利用できますが、これは2020年2月4日よりも前に発行されたパスポートのみが有効なので(住所欄のあるパスポート。2020年2月4日以降から住所記入欄がなくなりました)、いずれパスポートによる本人確認は終止符を打つでしょう。従来の本人確認資料はマイナカードに集約され機能をなくすので、それを便利と思う人もいれば、違和感を持つ人もいるかもしれません。
在留邦人の最も多い都市は
冒頭でご紹介した日本経済新聞の記事によれば、在外公館でのマイナカードの交付は在留邦人の多い都市から順次体制を整えるとあります。「海外在留邦人数調査統計」によれば、2022年の世界の在留邦人数は130万人。国別にみると、在米邦人数の最も多い国、第一位はアメリカ合衆国です(32%である42万人)。そして、中国、豪州、タイ、カナダと続きます。
米国内における都市別ランキングでは、一位から、ロサンゼルス、ニューヨーク、ホノルル、サンフランシスコ、サンノゼ、シアトル、シカゴ、オークランドの順。実際の交付がこのような都市を管轄する在外公館の順で実施されるのかはわかりませんが、在米日本人がどの国の居住者よりも早くにマイナカードの交付を受けると考えるのは現実的のように思われます。
参考文献
デジタル庁「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤 抜本改善ワーキンググループ(第8回)2023年3月29日
内閣府「マイナンバーカードについて 2022年10月26日」 https://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/wg6/20221026/pdf/shiryou1-2.pdf
日本経済新聞「マイナンバーカード、海外で交付可能に 法改正を検討 2022年12月7日」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0734K0X01C22A2000000/
総務省「海外に在留する者への行政サービスの提供のあり方 平成26(2014)年12月26日」https://www.soumu.go.jp/main_content/000342930.pdf
デジタル庁「マイナンバー(個人番号)制度・マイナンバーカード」https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/
厚生省「マイナンバーカードの健康保険証利用について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08277.html
外務省「海外在留邦人数調査統計(Annual Report of Statistics on Japanese Nationals Overseas)
外務省領事局政策課 令和4年(2022年)10月1日現在」https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100436737.pdf
国税庁「国外転出される方へ 国外転出をする時に、1億円以上の有価証券等を所有等している場合は、
所得税の確定申告等の手続が必要となります。」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kokugai/pdf/01.pdf
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