2023年に日本の親からの相続を受けた米国永住権者(を含む税法上の米国居住者)は2023年度のタックスリターンで申告が必要になるかもしれませんのでお読みください。

あなたの国際相続はIRSへの報告義務があるのか?

もし日本の親から相続で米ドル換算で10万ドル以上の遺産を受け取る場合、アメリカの税務局(IRS)にその事実を報告しなければなりません。これには不動産、証券、現金など、あらゆる種類の財産が含まれます。この報告は、Form 3520を使って、財産を受け取った年の翌年の4月15日までに行う必要がありますが、必要であれば10月15日まで延長することも可能です。

例: もし2023年に相続で遺産を受け取った場合、2024年の4月15日までに報告する必要があります。

米国での納税はあるのか?

受け取った財産に対しては、米国で追加の税金は発生しません。この点は心配無用です。なぜなら、アメリカ合衆国では故人が税金を払う義務がある「Estate(遺産)」Taxの概念があり、日本の親がアメリカの居住者でなければ、米国政府は課税権を持ちません。ただし、アメリカ合衆国にはEstate Tax(遺産税)とは別にInheritance Tax(相続税)を徴収する州が存在します。

Estate Taxは故人の遺産全体に対して課税されるのに対し、Inheritance Taxは受け取った個々の相続人に対して課税される税金です。これは、相続を受けた人が直接納税責任を負うことを意味します。全ての州がInheritance Taxを徴収しているわけではありません。現在、Inheritance Taxを徴収しているのは一部の州のみで、その数も限られており、Inheritance Taxを取りやめる州も出ています。Inheritance Taxの概念は、主に州内にある財産(州内の不動産や州内の金融資産など)に対して課される場合が殆どで、日本にある財産は一般的にはその範囲外です。相続人と故人との関係性や受け取った遺産の種類によって税率が異なったり、一定の条件下では免除される場合があります。例えば、配偶者からの相続はInheritance Taxの対象外だが、直系親族からの一定額以下の相続には免税措置が適用されるといったものです。これはまた別の記事で取り上げることとします。

違反した場合のペナルティは?

さて、この国際相続の報告 Form 3520を怠ると、遅れた月ごとに未報告の贈与額の 5 パーセントであり、最大 25 パーセントの罰金となります。また、米国外信託から受け取った金額の35%または$10,000のうち、大きい方がペナルティとして課されます。さらに、IRSからの通知を無視すると、さらに重いペナルティが科される可能性があります。提出を怠る、提出内容が不完全あるいは不正確である場合のペナルティは重大となる可能性はありますが、納税者に正当な理由、誠意を示す態度がある場合は例外が設けられておりペナルティを免除される場合があります。

国際相続の注意点:

近年、IRSは国際相続に関するペナルティを積極的に適用していますので注意を払ってください。特に、相続財産が金融資産の場合、Form 3520だけでなく、FBAR(FinCEN Form 114)による申告も必要になることがあります。

米国永住権者が日本の親から相続で受け取った財産が金融資産であり、その結果、自分の日本の金融資産額が$10,000を超える場合、FBAR(FinCEN Form 114)の提出が必要になります。これは、米国外にある銀行口座や金融口座の情報を米国政府に報告するためのものです。相続したお金を同じ年に海外送金で自分のアメリカの口座に移したために日本の銀行の年末残高が$10,000以下になったとしても、その年にいっときでも$10,000を超える場合は提出が必要です。また、この閾値$10,000は口座ごとの金額ではなく、保有資産の合計額であることに注意が必要です。つまり、あなたが3つの口座をもっており、それぞれが$4,000を保有しているならば、合計額は$4,000×3口座=$12,000であるため報告しなければなりません。

FBARに関する重要ポイントとペナルティ:

FBARを意図的に提出しなかった場合、最大$100,000または口座残高の50%のうち、高い方がペナルティとして課される可能性があります。非故意の違反の場合でも、違反ごと(Formごと)に$10,000(この金額はインフレにより変動するため、現在は$15,611)のペナルティが課されることがあります。

遅延した場合の対処法は?

Form 3520の出し忘れは待ったなしでのペナルティが課される現状であるため、専門家のアドバイスを受けながら提出方法は慎重に検討されるべきです。出し忘れに気づく際、当該年のFBARの出し忘れのみならず過年度のFBARの出し忘れにも気づくケースがみられます。このようなケースにおいてIRSは「正当な理由がある」と認められる場合に限り、IRSの提供するペナルティ軽減救済手続きをとることによりペナルティを免除する可能性があります。そのためには、遅延が意図的でなく、妥当な理由があったことを証明する必要があります。この手続きは専門家に依頼することが推奨されます。

本情報は、米国永住権者が日本の親から相続を受ける際に直面する可能性のある税務上の義務と、それに伴う注意点についての一般的な概要です。具体的なケースには専門家のアドバイスが必要であることを念頭に置いてください。政府間の情報交換が進んでいる現在、早めの対応が大きなトラブルを避ける鍵となります。

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