海外金融資産のリポーティング問題の解決オプション

永住権者のトクする税務知識

6/7/2020

海外金融資産の報告はIRSにより義務付けられています。これをFBARと一般的に呼びます。海外金融資産の年間残高が合計で1万ドル以上の方がリポートをしないといけません。過去にそのような金融資産を保持していたのに、リポートしていなかったが、典型的なFBARの問題です。

今回は、この解決方法について説明します。IRSが認めている方法は3つあります。

  • Delinquent FBAR Submission Procedure

該当するのは、通常の税務申告(Form 1040)が正しく申請されていた人で、FBARだけを忘れていた人です。ペナルティはありません。

通常の税務申告が正しくされていたとは、海外金融資産から発生する利子、配当、キャピタルゲインなどの投資所得が課税所得に含められ、あるいは課税所得に含めるほどの(総額で$10以下など)金額がない場合で、税務申告自体だけを見た時にまったく問題ない場合を言います。同時に税務申告自体にForm 8938などのフォームが正しく含まれていた人です。Form 8938が含むべきで、含まれていなかった人には別の救済方法があります。

通常のFBARのファイリングと異なるポイントはいくつかあるのですが、重要なポイントは何故FBARを提出が遅れたのかを説明するStatementを付けないといけない点です。

詳しく全体の情報を知りたいときはhttps://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/delinquent-fbar-submission-procedures のサイトで確認してください。

  • Streamlined Filing Compliance Procedures

この方法が該当するのは、税務申告が正しくされていなかった方、つまり修正申告が必要な方です。通常は総額で$10以上の課税所得が税務申告で反映されていなかったかたが対象です。課税所得を過少申告していた方になります。

もうひとつの条件は意図的に海外資産の存在を隠していなかったことを宣言できる人です。(意図的に隠していた方は、最後のオプションを使います)

過去3年間の税務申告を修正し、また過去6年間のFBARの申請を行います。そして、意図的に隠していなかったことを正式に宣言しないといけません。

ペナルティは、6年間のFBARの対象年度の年末の残高が最大の年にその残高の5%を支払います。もちろん3年間の通常の税務申告書で過少に申告されていた所得に対する所得税とそれに関連する利子も支払います。

詳しくは、https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/u-s-taxpayers-residing-in-the-united-states を参考にしてください。

さて米国の納税者で海外に居住されており、このFBARを提出せずに、かつ税務申告が間違っていた人には、特別な配慮がほどこされています。海外に住んでいて、ルールもわからないだろうという配慮ではと思います。米国市民と海外在住の永住権者に主に適用されます。

配慮とは、5%のペナルティが課せられないということです。詳しくは、https://www.irs.gov/individuals/international-taxpayers/u-s-taxpayers-residing-outside-the-united-states

  • Voluntary Disclosure Practice

最後のオプションは、IRSに刑事的に訴訟されるリスクがある人が対象になります。意図的に海外資産を隠していたと判断される状況であり、IRSがアクションを起こすまえに自発的に申し出ることにより問題を解決するのがこの方法です。

以前まではOffshore Voluntary Disclosure Program (OVTP)が存在していましたが、現在はこのVoluntary Disclosure Practiceのなかで処理されるようです。

「意図的に隠していた」と判断される場合はどのような場合なのかが読者の興味のあるところだと思います。こちらは個別の事実と状況によって判断されるのだと思います。資産の金額、申告されなかった所得の金額、対象となる人の知識レベル、仕事のポジション、そして申告しなかった年数なども考慮の対象になると思います。つまり全体的に判断されるということです。

詳しくはhttps://www.irs.gov/compliance/criminal-investigation/irs-criminal-investigation-voluntary-disclosure-practice にあります。この方法は、Tax Attorneyを雇われて行う場合が殆どです。この方法を使われる場合は当然ですが、大変事態が深刻な方ですね。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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