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永住権を放棄の年は、ご夫婦で夫婦合算申告を使うことはできません。これは多くの人が知らない事実です。この点について、今回は解説します。
夫婦合算申告を米国ではMarried Filing Joint(通称MFJ)と呼びます。米国で使える様々な申告形態のなかで、一番税率が優遇されているのがこのMFJです。日本と同じように累進税率が使用されている米国では、Bracket(税率区分/課税区分)があります。このBracketごとに課税される税率が異なり、Bracketの金額が高くなれば、なるほど税率が上がります。現在、1
番高い税率区分に対する税率は37%になっています。このBracketの金額がすべての税率区分で夫婦合算申告が一番高くなっているのです。つまり、逆の言い方をしますと、MFJ申告では税率が低いBracketの金額の幅が非常に高いので、全体的な税率が低くなります。
例えば夫婦合算ですと、約$81,000~$172,000までの所得の税率区分は22%の課税です。夫婦個別申告の場合は、半額の約$49,500~$86,000の部分しか22%の税率が使えないのです。これ以上の所得はさらに高い税率がかかる、つまり別のBracketになってしまうのです。
別のケースで考えましょう。夫婦で、共働きではなく、片方だけに所得があり、夫婦合計で課税所得が$150,000だったと仮定します。この夫婦が夫婦合算で申告した場合の連邦税額と、夫婦個別申告をそれぞれがした場合の連邦税額では、約$5,500の差が出ます。所得がない配偶者はもちろん税金はないのですが、$150,000に対しての税額のかかり方が違うので、差が出るのです。
そのため米国では夫婦は、ほとんどの人が夫婦合算申告を選択して、申告をしています。しかし、永住権の放棄の年は、この夫婦合算申告が使えないのを知らない人が多いのです。この記事を書くにあたり、筆者も「何故永住権の放棄の際に夫婦合算申告が使用できないか?」について考えてみました。その答えは、Form 8854[i]で個人の資産をIRSに報告しないといけないからだと思います。この理由は違っているかもしれませんが、大切なのは、ルールにどのように対応するかです。(本当の理由を知っている人は、ぜひ教えてください。)
この制約の実務的な影響を考えてみましょう。第一に帰国の年は、おおむね連邦税は、MFJ時より、多めに課税されるということです。昨年度と同じであろうと高をくくっていると申告時に痛い目にあうかもしれません。注意しましょう。第二に、予定納税などでの事前の支払いが足りなくなり、申告時に想定外の高額な税金を支払ないといけない場合が生じます。この二つの影響を考えた場合は、解決策は、事前にプロフェッショナルに頼んで、税額のシミュレーションをしてもらうです。筆者は駐在員の方でも、永住者の方でも帰国時の高額な税金に対して驚かれて、落胆される方を数多く見てきました。一番の対策は税額の予想を立てること以外はありません。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
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[i] https://www.irs.gov/instructions/i8854