新年明けましておめでとうございます。『一月往ぬる二月逃げる三月去る』という慣用句があるように、新年があけて数カ月はあっという間に過ぎてしまいます。今回はこの数カ月の間に申告期日を迎えるForm 1099とForm 1042についてお話したいと思います。これらの書類は『Information Return』と位置付けられ、確定申告のように税金を算出するものではありません。Form 1099もForm 1042も、支払いの受領者の所得を、支払者側がInternal Revenue Service(IRS, 内国歳入庁)と受領者へ報告する書類です。毎年なんとなく申告されているという方も多くいらしゃると思いますので、注意しておきたいポイントも含めてご紹介していきます。
Form 1099
Form 1099 は年間$600以上を『個人事業主』に支払った場合、支払元が発行する書類です。その『個人事業主』への年間支払金額が記載されている書類で、支払先が確定申告の際に使用します。そのため、Form 1099は会計年度ではなく、すべての法人が暦年で申告します。Form 1099にもいろいろな種類がありますが、よく使用されるのはForm 1099-MISC Miscellaneous InformationとForm 1099-NEC Nonemployee Compensationではないでしょうか。オフィスなどの家賃の支払いはForm 1099-MISCで申告します。また、サービスなどの対価としての報酬はForm 1099-NECを使用します。(今後この記事で使用されるForm 1099はForm 1099-MISCとForm 1099-NECを指します。)
ではどのように支払先が『個人事業主』かどうかわかるのでしょうか。支払先の取引先業者より提出されるForm W-9 Request for Taxpayer Identification Number and Certificationという書類を見ればわかります。『個人事業主』の場合Form W-9中の、事業形態で『Individual/sole proprietor or single-member LLC』にチェックマークがついています。新しく取引を開始する業者にはForm W-9の提出を求めるのはもちろん、Form 1099の対象業者については毎年Form 1099を発行する前に住所などを確認する意味でも、Form W-9の再提出依頼、または昨年度より変更がないか確認することをお勧めします。
Form 1099は基本的には『個人事業主』への支払いが対象ですが、例外もいくつかあります。そのうちのひとつが弁護士費用です。$600以上の弁護士費用は、支払先が『個人事業主』でなくても、すべての支払先にForm 1099を発行しなくてはならないので、ご注意下さい。
また、Form 1099は支払元の法人に申告義務があり、個人レベルでの支払いは対象ではありません。例えば個人が、『個人事業主』である大家さんに年間$600以上の賃貸料を支払ったとしても、Form 1099は発行する必要はありません。ただ、個人でも、その方が個人事業をされていて、その事業に関する該当取引がある場合は、申告義務があります。
Form 1099の申告期日はForm 1099-NECが1月31日。Form 1099-MISCが紙申告の場合2月28日、電子申告の場合は3月31日になります。
Form 1042
Form 1099は税務上アメリカ居住者に対し発行されますが、アメリカ非居住者に対しては、Form 1042 Annual Withholding Tax Return for U.S. Source Income of Foreign Personsが発行されます。Form 1042もForm 1099同様、暦年での申告となります。申告期日は3月15日です。
日系企業で多く見られるForm 1042の該当取引は、親会社への配当、利子、ロイヤルティ、役員報酬の支払いです。通常これらの支払いに対する米国源泉徴収税率は30%ですが、支払先が外国法人であり、日米租税条約が適用される旨を記載したForm W-8BEN-E, Certificate of Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding and Reporting (Entities)を支払元に提出した場合、もしくは支払元が過去に提出された同書類を保持している場合、日米租税条約の特別税率が適用されます。この特別税率が適用される条件のひとつに、支払先が米国納税者番号を保持していることが挙げられます。2023年中に米国子会社設立後はじめて配当金を出した、または借入金の利子を支払ったが、まだ親会社は米国納税者番号を持っていない場合、Form 1042を申告する前にForm SS-4 Application for Employer Identification Numberを申請し米国納税者番号を取得する必要があります。2024年中にこれらの支払を予定している企業で、親会社が米国納税者番号を持っていない場合は、今から対応されることをお勧めします。
Form W-9には有効期限がないのに対し、Form W-8BEN-Eは署名から3年後の12月31日が有効期限となります。Form W-9もForm W-8BEN-Eも直接IRSへ申告されるものではありませんが、支払先の情報として社内で保管する必要があります。
このようにForm 1099とForm 1042の申告期日が1月~3月の間、毎月やってきます。これらの書類は支払先の所得情報をIRSシェアするのが目的で、支払先の確定申告にも関わってくるため、速やかで正確な対応を心がけましょう。
記事に関するご質問は、柴原 舞([email protected])まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
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