今回は、日本に証券口座を持っている方からよく質問される「MRFって何でしょう?」について、米国側への日本の金融資産報告の観点から知っておくとよいポイントをお話しします。
証券会社や銀行経由で株式や投資信託などに投資すると、定期的に取引明細書が送られてきます。明細書にはご自身の投資している銘柄の内訳や成績が記載されていますが、その中に「MRF」という銘柄を目にしたことがあるかもしれません。その銘柄の残高が「 ××口」などと書かれていたりして、「ん?これって何だっけ??」と思った方、これは、Money Reserve Fundマネー・リザーブ・ファンドの略称です。
Image: 国立印刷局
Fundというぐらいなので預金ではなく、MRFは投資銘柄といえます。しかし、ええー?そんな銘柄に投資した覚えはないよ、という方もいらっしゃるかもしれません。
一番大きなところからいいます。MRFというのは、ご自身の証券口座開設時に「総合口座」が開設された場合には、初期資金として銀行口座から現金をこの総合口座に入金しますと自動的にこのファンドの運用がスタートするので、それ以降、(しっかり理解していないと)ご自分の明細書にいきなり載っているように見えてしまう性質があると思われます。
次のポイントは、たとえば、証券会社の金融商品を売買する際に、銀行口座からお金を振り込んで株や投資信託を購入したり、投資商品からの配当金や分配金を受け取る“箱”として銀行口座へ振り込んだり、そして、新たに投資しようとして銀行口座から証券口座へ資金を入金したりという、「証券口座⇔銀行口座」の間の手続きに不便を感じる方もいらっしゃると思いますが、総合口座は、これらの一連の手続きを証券会社内で行うようなイメージです。細かく言えば、この手続きに対して色々な立ち位置があると思いますので、専門家へご相談されるなどして、ご自身に合う方法をお選びください。
そして、最後に、アメリカのタックスリターンに関わってくる可能性のあるポイントです。
MRFを保有している方で、アメリカのタックスリターン時に日本の金融資産を開示する義務のある方は、「口数×1円」の計算で残高を報告する、ことになろうかと思います。投資信託というのは一口当たりの単価は常に変動するものだという常識があると思いますので、MRFが常に1円で計算されることに違和感を感じられるかもしれませんが、以下にご案内する日本証券協会、各証券会社の解説を参考になさっていただくと、理解が深まると思います。日本の金融資産開示義務については、ビザステータス、申告形態、保有資産額などによってケースバイケースですので、必ずしも報告義務のあるものではありません。この点、ご注意ください。
日本証券協会「投資の時間 MRF」より:
- 証券総合口座で、投資資金を待機させておくための追加型公社債投資信託のこと。マネー・リザーブ・ファンドの略称。
- 元本は保証されていませんが、流動性と安全性を確保するため、運用対象を格付け・残存期間などで厳しく定めており、高格付けの債券のほか、コマーシャルペーパー、譲渡性預金証書などの短期金融商品で運用されています。
- 収益分配金を毎日計算し、月末に分配金に対する税金を差し引いて一括して再投資します。いつでも手数料なしで1円単位で入出金できます。
- 株式・債券などを買い付けた場合にはMRFを自動解約し、逆に株式・債券などを売却した場合には自動的にMRFを買い付けるなどの機能があります。
- MRFは短期証券や格付けの高い公社債などで運用されるため安全性が高く、また普通預金と比べると利回りも高くなっています。さらに1円からの預け入れ、即日換金(手数料なし)など、従来の公社債投資信託にはなかった流動性の面にも優れているのが特徴です。
MRFは、各証券会社によって「野村MRF」、「日興MRF」、「三菱UFJ MRF」という銘柄がつけられています。
野村証券 「証券用語解説集」より:
- マネー・リザーブ・ファンド(Money Reserve Fund)の略称。オープン型の公社債投資信託。信用度が高く残存期間の短い、内外の公社債およびコマーシャル・ペーパーなどを投資対象とする。
- 1円以上1円単位で購入でき、毎日収益が計上され、その収益は、1ヵ月分まとめて再投資される。
- 運用内容からはMMFと混同しがちだが、公社債投資信託として別途購入申し込みを必要とするMMFに対し、証券口座に入金すると自動的に運用されるのがMRFで、金融機関の「預金」に近い位置付けとなる。ただし、運用成果は実績に応じて変わるので、元本が保証されているものではない。
- 2016年1月の税制改正で、MRFの利子や収益分配金、譲渡・償還損益も上場株式・公募株式投資信託等と同様に申告分離課税・損益通算の対象となった。
SMBC日興証券 「初めてでもわかりやすい用語集」より:
- MRFとは、安全性の高い公社債などで運用される投資信託のことで、Money Reserve Fundの略称です。運用資産に株式は含まれません。
- 1円以上1円単位で購入することができ、購入後すぐに換金することもできます。基本的に販売手数料や信託財産留保額などはかかりません。
- 証券口座を開設する際に、MRFの申し込みをしておくと、証券口座へ入金したお金や株などを売却したお金は自動的にMRFで運用され、MRF以外の有価証券を購入する場合はMRFが売却されて、購入代金に充てられます。
- MRFは銀行の普通預金のように例えられることが多いようです。確かにその一面はありますが、普通預金と違い、投資信託ですので、元本保証もなく利回りが確定しているわけでもありません。しかし安全性が極めて高い商品で運用されているため、元本の安全性も高くなっています。
三菱UFJ銀行 「MRFとは何ですか? | よくあるご質問」より:
- マネーリザーブファンド(追加型公社債投資信託・自動けいぞく投資専用・マル優適格)の略称です。
- 証券総合口座専用のファンドで、手数料がかからず入出金がご利用いただけます。
- 有価証券の売却代金、利金、分配金など自動的にMRFに振り替え、無駄なく運用します。
- また、有価証券の買付等により不足金が生じた場合にはMRFを自動的に売却して充当します。
- MRFは投資信託です。預金ではなく、預金保険制度の対象ではありません。
- MRFは公社債等の値動きのある証券に投資しますので、基準価額は変動します。
- また、組み入れた債券の発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価の変化等により 投資元本を割り込むことがあります(リスクは上記に限定されるものではありません)。
- したがって元本が保証されているものではありません。
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出典
https://www.npb.go.jp/ja/intro/index.html
https://www.jsda.or.jp/jikan/word/171.html
https://www.nomura.co.jp/terms/english/m/mrf.html
https://www.smbcnikko.co.jp/terms/eng/m/E0019.html
https://faq01.bk.mufg.jp/faq/show/688?category_id=120&site_domain=default