個人所得課税の税率構造の国際比較

Source:財務省 https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/income/b02.htm   (2021年1月現在)

 

1.アメリカの租税というと・・・?

『租税とは、国民のための任務を果たすために国民から強制的に徴収するお金。税金、あるいは単に税ともいう。租税は色々な基準で分類できる。たとえば,徴収する主体を基準にすると,国税(国が徴収する税)と地方税(地方公共団体が徴収する税)に分けられる。また,負担のあり方によって区別すると,直接税(所得税・法人税のように,納税する者と税の負担者が一致している税)と、間接税(酒税・消費税のように納税する者と税の負担者が異なる税)に分けられる。』引用:学研キッズネット

税金と言ってくれればわかりやすいのに租税といわれると途端にわかりにくくなる、という読者の方もおられるでしょう。さっそく、前述の説明をアメリカに当てはめてみます。

アメリカの場合、租税を徴収する“主体”別にわけると、米国連邦税(US Federal Taxes)、収税(State Taxes)、そして市や群などの地方自治体が課す地方税(Local Taxes)に分けられます。“米国の税金”という際、通常、連邦税を指すことが多いのですが、記事やニュースを読む場合には、どの税金を指しているのかに注意を払うことが大切です。

連邦税は内国税(Internal Tax)と関税(Federal Customs Duties)に大別され、内国税はIRSの管轄です。連邦税はIRSが、そして、州税・地方税はIRS下の各州・地方自治体の税務当局が独自の基準を定めているため、州によって税制も税率も大きく異なります。昨今のコロナ渦でリモートワークにシフトしているアメリカでは、このような州税や地方税など含めた様々な要素を比較検討し、移り住む場所を決定する人たちも多くなりました。

 

 

2.税率の国際比較と高額所得者への措置

アメリカの連邦個人所得税の税率は、課税所得の金額に応じて、10%~37%までの累進課税の税率が適用されます。日本は、5%~45%です。冒頭の図は、日本国財務省により発表された税率の国際比較です。日本とアメリカを比較してみていかがでしょうか?パッと見ると、日本はアメリカに比べて高額所得者への税率が高いと感じますか?

アメリカの高額所得者の場合には、代替ミニマム課税(Alternative Minimum Tax:AMT)という、追加で課せられる税金があります。これは、高額所得の納税者が、節税対策によって通常の所得税が低く計算された場合に、その減税措置を除いて計算した税金を当局が追加で徴税することを可能するものです。このAMTの計算では、州税、市税、固定資産税、動産税、外国税額控除などが控除として認められず、AMT所得に税率構造のブラケットと課税所得に応じたAMT税率(26%、28%)を掛け、通常の所得税計算と比べた際の超過分を「支払うべき追加税額」として課す仕組みとなっています。

 

3.あなたはどの州にお住まいですか?

日本の個人住民税の一律10%という税率とは異なり、アメリカは、州により所得税の制度も税率も様々です。

全米のうち、所得税のない州が7州あります:アラスカ州、フロリダ州、ネバダ州、サウスダコタ州、テキサス州、ワシントン州、ワイオミング州。

また、部分的に課税する州、つまり、投資所得だけに課税し、稼得収入(労働やサービスを提供することで得た収入)は非課税という州が2州あります:テネシー州、ニューハンプシャー州。

そして、所得税を課す州でも、累進課税ではなく一定税率課税を適用している州が8州あります:コロラド州、イリノイ州、インディアナ州、ケンタッキー州、ミシガン州、ノースカロライナ州、ペンシルベニア州、ユタ州。このうち最も高い税率を課すのはノースカロライナ州(5.25%)です。

上記以外の州では累進税率が適用されており、最高税率トップはカリフォルニア州の1%~12.3%、次いでハワイ州の1.4%~11%となっています。

この累進課税率トップの12.3%と一定税率トップの5.25%、そして、そもそも所得税のない州など、アメリカといってもひとくくりにはできません。この多様性のあるアメリカで納税を続ける読者の皆様にとって、ご自分が住みたい州、これから引っ越しをしようと思われるエリアについて、その土地の教育レベルや日本食スーパーの有無チェックと同じく、その土地の税金についてチェックしてみるのもよいかもしれません。

 

 

まとめ

  1. アメリカの租税を主体別にみると、連邦税、州税、地方税に分けられ、負担別にみると直接税、間接税に分けられる。所得税は納税者が直接負担する税金。
  2. アメリカ連邦個人所得税は累進課税制度をとっており、税率は10%~37%。高額所得者に対して代替ミニマム課税がある。
  3. 州の所得税は各州さまざま。最高税率トップのカリフォルニア州(3%)と所得税の無いネバダ州はお隣同士。

 

この記事は、複雑な税法や規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的で提供されています。内容が不確かな場合、実際のアクションを取る際等には、常に税務・法務などの専門家と相談をしてください。

 

この記事に関するご質問は、ハラー基江[email protected]まで。CDH会計事務所では米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。弊社のYouTubeクロスボーダーチャンネルではいろいろな内容を取り上げて説明しています。是非ご覧ください。また無料相談も行っています(予約リンク)。