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2022年5月から、海外居住者でも国民年金に任意加入していれば、日本のiDeCoに加入ができることになりました。[i] iDeCoとは米国の制度で言いますとTraditional IRAに似た制度です。今回は、この制度を米国居住者が利用した場合について考えてみましょう。

  • iDeCo
    この制度は、掛金が日本では全額所得控除され、運用益も非課税で再投資されます。そして受け取るときも年金として受け取る場合は、「公的年金等控除」、一時金(一度に受け取る呼び名)の場合は、「退職所得控除」の対象になります。端的に言えば、受取時に税金面で優遇措置があるということです。
    この制度が海外に居住している日本国籍を持つ方が利用できるようになりました。日本国籍を持つ方だけなのは、国民年金の任意加入は日本の国籍を保有している人でないとできないからです。[ii] 国民年金は居住で決まってくる年金で、日本に居住している人は、国籍にかかわらず課税されますが、国外に出た人は日本国籍を持つ人だけが加入資格があります。
    どのくらいの金額を拠出できるかですが、自営業の人が最高で月額6万8,000円、一年で81万6,000円を拠出できます。専業主婦の場合は年間で14万4,000円です。[iii]
  • 米国での税制
    もちろんiDeCo用に米国の税制で個別の規定があるわけではないと思います。[iv]ひとつひとつの税制について、私なりに考えてみました。

      • 掛金:日本では所得控除つまり課税をされないで、拠出できますが、米国に在住している人は、日本で税務申告をしていません。日本で非課税でも米国居住者には影響がありません。
        米国税務のもとで非課税扱いになるかですが、私はならないと思います。詳しく税法を見ていけば外国の年金制度に対する課税で出ているのかもしれませんが、米国の税法で課税所得から省くことができる制度はIRA制度だけですので、iDeCoが該当するとは考えにくいです。
      • 投資利益:こちらも同じようにIRSに細かい規定があるかもしれません。理論上は課税対象になると思います。なぜなら投資講座で毎年利益が出ているわけですから課税対象です。
        しかし、海外の投資ということで、毎年投資利益が納税者にリポートされるわけではないので、私は実際は非課税で処理されるのではないでしょうか? この部分は大変に税法も不明瞭だと思います。筆者としては気を付けてくださいというほかはありません。逆に言えば、日本に滞在する永住権者、市民権の人が米国で持つIRAの毎年の投資利益が課税されるか否かという疑問点と同じです。
      • 受取時ですが、こちらは年金等の課税になりますので、日米租税条約の17条の1[v] により年金等の受取は、受け取る人の居住地課税です。米国では通常の所得税率で課税されて、日本では二種類の控除を選べるようです。受取時にどこに住んでいるかで決まります。日本で受け取るほうが控除を受けられる分だけ有利かもしれませんね。
  • 今後の対応について
    米国に滞在している日本国民で、クロスボーダー生活を送る人は増えると思います。その結果、このiDeCoの制度を利用される方も多くなるはずです。日本で受け取ることができれば、そのベネフィットは非常に大きいように思えます。
    しかし、注意点は、米国の税制では外国の税金が優遇された退職年金制度に対するルールがはっきり記載されておらず、クリアな回答がない点が懸念点です。日本の退職年金制度に参加することで米国の税金が節約できるという考え方を米国が許容するはずはないからです。逆に上記の2(2)での投資利益に対する課税は、米国政府としては、現実的には難しいと思います。それはForm 1099などが発行されて、IRSに報告されることがないからです。
    このように、日本を含んだ外国での優遇税制を受けた退職年金に対する取扱いに関する規則は不明瞭で、注意が必要です。
  • 最後に
    日本国民で、国民年金の任意加入者には朗報です。特に将来日本に帰国する予定の人には、十分注目する可能性がある制度かもしれません。ただ、日本の金融機関が海外居住者に簡単に口座を作ってくれるかは別問題です。
    米政府の税制制度と、日本の金融機関の対応が心配ですが、十分検討に値する変化だと思われます。

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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[i] https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html

[ii]https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/kanyu/20140627-02.html

[iii] https://www.smbc-card.com/like_u/money/ideco.jsp

[iv] The Cross-Border Family Wealth GUIDE by Andrew Fisher, Chapter 7, Wiley

[v] https://www.treasury.gov/resource-center/tax-policy/treaties/Documents/japantreaty.pdf