現在米国では米国財務会計基準審議会(FASB)が発表した新しいリース会計が話題となっていうます。新しいリース会計は非上場企業は2019年12月15日以降に開始する事業年度より強制適用となっていましたが今年7月に入って新たな発表があり、新リース会計の強制適用は2020年12月15日からとなりました。よって暦年決算の場合は2021年開始事業年度より適用となります(早期適用も可能)。先延ばしになったとは言え2年後には新しいリース会計を導入する必要がありますので早めの準備が必要です。では、この新しいリース基準はどのように会社の財務諸表に影響を与えるのでしょうか?

端的に言いますと、現在、借手がリース費用を経費として計上しているオペレーティング·リースであっても、リース期間が1年以内等の一定の要件を満たすもの以外はオンバランス化、つまり貸借対照表に資産および負債として計上することが求められ、経理作業が煩雑になります。また、この新しい会計基準は遡及して適用することとなりますので2019年度の財務諸表にも影響を与えることとなります。新しいリース会計について述べる前に、まず現在のリース会計がどのようになっているかをご説明させていただきます。なお、貸手のリース会計基準に変更はありません。

現行会計

現行会計ではリースは二つのタイプに分かれています。

キャピタル·リース:下記4つの条件のうち、一つでも該当するとオンバランスすることが求められます。

  • リース物件の所有権がリース期間終了時に借手に移転する条項がある
  • 割安購入選択権がついている
  • リース期間がリース物件の耐用年数の75%以上である
  • リース料総額の現在価値が、リース物件購入金額の90%以上である

上記の場合、リースをしている資産の所有権を持っているのに等しい効果、つまり購入した場合と得られる経済的便益は同じと考えられるため、固定資産と負債として計上することとなります。

上記に該当しないリースはすべてオペレーティング·リースとなり、リース費用はすべて費用計上されることになります。現行会計ではオンバランス化の計算が煩雑であるため、キャピタル·リースに該当しないようにオペレーティング·リースとして契約を結ぶことが可能でした。新会計では両リースともオンバランス化が求められるのですが、リースの種類や会計処理方法はどのように変わるのでしょうか?次に新リース会計について具体的に述べていきたいと思います。

新会計

新リース会計でも、2つのタイプのリースがあります。

ファイナンス·リース:リースしたアイテムの実質的支配権が移転されるリース。実質所有権の移転とは上記に示しているキャピタル·リースの条項と非常に近いものです。主な違いとしてはキャピタル·リースでは割安購入選択権が一つの要件となっていますが、ファイナンス·リースでは妥当な金額での購入選択権とされており、割安ではなくなっています。

オペレーティング·リース:実質的所有権移転がないのもの、つまりファイナンス·リースに該当しないもの。

リースの種類は名前以外はほとんど変更ないようですし、両リースともオンバランスされるわけですが、会計処理はどのように違うのでしょうか?

二つのリースの会計処理

ファイナンス·リースであってもオペレーティング·リースであってもリース契約時の処理は同じであり、リース料総額の現在価値を資産と負債に計上します。その後、ファイナンス·リースではリース期間にわたって定額法にて償却し、減価償却費として計上しますが、オペレーティング·リースの場合は償却はース期間にわたって定額法にてリース費用として計上計上されます。具体例をみるとともに両リースの仕訳をみてみましょう。

例1

  1. 3年のキャンセル不能のリース。リース更新のオプションはなし
  2. 年間リース支払額は$200,000
  3. 利子率6%
  4. 最低総支払リース料の現在価値$534,602

ファイナンス·リース

  資産  負債  償却費  支払利息  費用合計
開始時 $534,602 $534,602      
1年目 $356,401 $366,679 $178,201 $32,076 $210,277
2年目 $178,200 $188,679 $178,201 $22,001 $200,202
3年目     $178,200 $11,320 $189,521
合計     $534,602 $65,397 $600,000

 

オペレーティング·リース

  資産  負債 リース費用
開始時 $534,602 $534,602  
1年目 $366,679 $366,679 $200,000
2年目 $188,679 $188,679 $200,000
3年目     $200,000
合計     $600,000

 

上記を見ますと3年間で費用と計上される金額は$600,000と両リースとも同じですが、ファイナンス·リースは償却費と支払利息に分けて費用を計上していますが、オペレーティング·リースは償却費がすべてリース費用として計上されることとなり、オペレーティング·リースの方が簡素化されているのがわかります。なお、ファイナンス·リースの仕訳は現行のキャピタル·リースの仕訳と同様となります。

リース期間

リース期間は償却費用にも大きく影響を与えます。通常リース期間はあらかじめ契約によってきめられていますが、リースの更新は考慮しなくてもよいのでしょうか?リース契約時にリースを更新することがかなり確実であればリース更新を考慮する必要があるとされています。例えば、リース契約時、契約期間は3年であってもリース期間終了後もう3年間リース期間を延長することがほとんど確実であれば6年をリース期間として現在価値の計算と償却をする必要があります。ただ、上記にも述べましたが、リース期間が一年以内であればオンバランス化は必要ありません。

最後に

新しいリース会計が導入されると既存のオペレーティング·リースをすべて見直し、資産及び負債計上をし直す必要があるため、作業に時間がかかりますのでお早目の準備をお薦めしております。新リース会計についてご質問等ございましたらCDH会計事務所までご連絡ください。

 

CDH会計事務所 監査部シニアマネージャー中尾