米国では昨年度から非上場企業であってもすべてのリースはあたかも借入を行って資産を購入したかのように所有権資産とリース負債として計上し、その後毎月資産を償却し、支払ったリース料は借入を返済しているかのように処理することが必要になりました。多くの企業が時間をかけてリース会計を導入されたかと思います。今年は既にすべて所有権資産、負債として計上しているため再度計算をする必要がなく、また今後もあまりリース会計について考える必要がないとお考えになられているかもしれません。しかし、オフィスリース契約を更新せずに引っ越しをして新しいオフィスリース契約を開始したり、新たに車のリースを開始したりすると、新たに所有権資産とリース負債を計上する金額の計算をしなければならなくなります。このリース会計は今後も適用し続けなければならないためリース会計を理解しておくことが重要です。そこで今回はリース会計について改めて説明させていただきます。
ファイナンスリースとオペレーティングリース
リースには二つの種類があり、ファイナンスリースとオペレーティングリースがあります。両リースともリース開始時に所有権資産およびリース負債を計上しますが、ファイナンスリースとオペレーティングリースではその後の仕訳が異なります。ここではまずファイナンスリースとオペレーティングの違いについて説明いたします。
ファイナンスリース:下記5つの要件のうち一つでも該当するとファイナンスリースとなります。
- リース物件の所有権がリース期間終了までに借り手に移転する
- リースには購入オプションが含まれており、借り手のオプション行使が合理的に見込まれる(目安として90%以上)
- リース期間が耐用年数の大部分を占めている(目安として75%以上)
- リース料総額の現在価値がリース物件の時価のほとんどすべてを占めている(目安として90%以上)
- 資産が特殊な性質であり、リース期間終了時に、貸手側にとって代替的な用途がないと予想される
オペレーティングリース:上記の要件に当てはまらない場合はすべてオペレーティングリースとなります。
では、ファイナンスリースとオペレーティングリースで会計処理はどのように異なるのでしょうか?
ファイナンスリースとオペレーティングリースの会計処理
下記が各リースの会計処理となります。
ファイナンスリース |
オペレーティングリース
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リース開始時 | リース料総額の現在価値(を資産と負債に計上 | |
その後 | リース資産をリース期間に渡って定額法にて償却し、償却費として計上 | 割引前の総リース額をリース期間に渡って定額法にて償却し、リース費用として計上。そして利息は負債の増加として計上 |
その後 | また、リース負債を借入金の返済と同様に処理をし、支払利息を計上 |
リース開始時の仕訳はファイナンスリースもオペレーティングリースも同じですがその後の仕訳が異なります。例を見てみましょう。
例:4年間の機械リース。1年ごとの支払いで1年目のリース料が$100,000、2年目が$110,000、3年目が$125,000、4年目が$145,000。4年間での合計支払いリース料は$480,000で割引率が7.2278%。リース料総額の現在価値が$400,000であった場合、ファイナンスリースとオペレーティングリースの仕訳は下記となります。
ファイナンスリース | オペレーティングリース
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リース開始時
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Right of use (ROU) Asset $400,000
Lease liability ($400,000)
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Right of use (ROU) Asset $400,000
Lease liability ($400,000) |
1年目-利息計上と償却 | Interest expense $28,911*
Lease liability ($28,911)
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Lease expense $120,000*** Lease liability ($28,911) * Right of use (ROU) Asset ($91,089) (Lease expense と Liabilityの差額) |
Amortization expense $100,000** Right of use (ROU) Asset ($100,000)
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リース料支払い | Lease liability $100,000
Cash ($100,000)
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Lease liability $100,000
Cash ($100,000) |
* リース負債 $400,000 x 7.2278%
** 使用権資産(ROU)$400,000 of ROU÷4年(リース期間)
***割引前のリース料総額、$480,000÷4年(リース期間)
リース開始時に計上する使用権資産とリース負債はリース料総支払額の現在価値となります。現在価値は、将来のお金の価値と現在のお金の価値は異なる、という考えに基づいています。例えば、銀行に$1,000預けたとします。そして1年後、利息がついて$1,100になったとします。1年後の$1,100は現在に直すと$1,000である、と考えられます。つまり、1年後の$1,100の現在価値は$1,000となります。よってリース開始時に将来のリース料の総額を現在の価値に割り引いて使用権資産とリース負債で計上する必要になります。この現在価値計算は毎月のリース支払額、支払回数、利率がわかればエクセルで計算できます (“PV” という機能を使います)。
また、上記計算は複雑に見えますが、エクセルを利用して使用権資産とリース負債の償却表を作成することできます。この償却表には毎月のリース資産の償却、利息の計上、リース支払い時の負債の減少の数字が表示されますので、毎月行うべき仕訳がわかります。ですのでリース開始時に償却表を作ることが重要です。
割引率の算出方法
上記の計算にて割引率を使っていますが、割引率はどのようにして算出するのでしょうか?会計基準ではリース契約から利率がわかればこの利率、あるいはリース資産を購入するために借入をした際に銀行から借り入れた場合の利率を使う必要があるとされています。しかし、どちらとも入手するのは難しいかと思います。この会計基準には例外があり、非上場はリスクフリーレートを使うことが可能です。リスクフリーレートとは無リスクの利率となり、アメリカの 国債の利率などを指します。国債利率はインターネットで検索すれば見つけることができます。
リース会計の例外
ただし、一つ例外があります。リース期間が一年以内であり、かつ、更新して1年以上リースしない場合は資産と負債として計上せず、毎月リース費用のみ計上することが認められています。ここでの注意点ですが、リース期間が一年以内であればすべてリース料として経費計上が認められているわけではなく、あくまで1年以上リースする可能性が低い場合のみですので注意が必要です。例えば月極リースであっても、一年以上リースし続ける可能性が高い場合には資産と負債を計上する必要があります。
CDH会計事務所ではリース会計計算のお手伝いをさせていただいております。リース会計に関しましてご質問のございましたらお気軽にCDH会計事務所の中尾([email protected])までお問い合わせください。