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このイラストのように、S コーポレーションのオーナーに支払う給料以外の利益には雇用税がかかりません。この部分は確かにLLCなどと比べると節税になります。そこで「Sコーポレーションにしたほうが税務上有利ですよ。LLCでもS Corpとして税金が課せられる選択ができるんです。」という言葉に乗せられて、簡単にSコーポレーションの選択をしないでくださいという記事を書いてみました。

 

私の経験から下記のようなデメリットがSコーポレーションにはあると思います。

  • 費用がかかり、理解が難しい

Single MemberでのLLCは、Disregarded Entityと言いまして、連邦税の上では、個人の税務申告の他に税務申告書を作成する必要はありません。しかしSコーポレーションは正式な法人ですから、S-Corpの選択をすると別途税務申告をしないといけません。こちらにはそれなりのコストがかかります。

 

さらにS コーポレーションは、オーナーでもありながら会社で仕事をしている人にReasonableな給料を支払わないといけないという制約があります。ですから給料計算を正しく行い、給与税を納付するのにも給料会社に支払いをしないといけません。その分余計にコストがかかります。

 

つまり雇用税の節約分はあるかもしれませんが、別途で税務申告や給与税のプロセスで余計なコストがかかる可能性が大です。気を付けましょう。

 

もうひとつは、S コーポレーションで大変重要な概念があります。それをBasisと呼びます。こちらに関連したノウハウが非常に複雑でアメリカ人でも理解が難しいのに、日本人にはこの概念と関連ルールを理解するのが一大事です。メンタルチャレンジに挑みたいという人は別ですが、シンプルにビジネスをとらえたいという人にはS コーポレーションは向いていないかもしれません。

  • 日本に戻ると株主でいられない

S コーポレーションのひとつの制約として、外国人が米国居住をしている間は良いが、その外国人が米国を出て、米国の非居住者になると株主になれません。もちろん不注意で、日本に在住の親族をS コーポレーションの株主にすることもできません。米国市民であれば、問題はありません。

 

他には株主数への制限があったり、発行できる株の種類にも制約があったりで法人としてはかなりインフレキシブルなのがS コーポレーションです。気を付けましょう。

 

  • 資産のDistributionの課税方法の違い

資産のDistributionは、会社が存続している際にも起こりますが、会社を清算する場合にも起こります。LLCの場合に資産を株主にDistributionをする場合は、簡単に言いますとコストになり、株主が税金を支払うことにはなりませんが、S コーポレーションでは、市場価値でのDistributionになり、受け取る側にはコストと市場価値の差額に対して税金が発生してしまいます。多くのS コーポレーションの株主の方が、会社の清算時に課税状況に陥り、嫌な思いをいたします。

 

以上3点ほどS コーポレーションのデメリットを説明しました。この記事で、なかなか難しい形態であることをぜひ理解していただきたいと思います。

 

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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