日本では2023年10月1日より消費税のインボイス制度が開始されました。仕入先より適格請求書が発行されないと消費税の確定申告時に仕入税額控除ができなくなるというものです。アメリカでは国レベルでの消費税はなく、州・地方ごとに売上税(Sales Tax)のルールが定められています。実はこの売上税に関してもインボイスは大変重要な役割を果たします。

原材料や商品の仕入についても課税される日本の消費税とは異なり、アメリカの売上税は一般的に最終消費者のみに課税されます。例えば自宅やオフィスで使用されているボールペン。日本では工場での原材料の購入、量販店での仕入れ、個人・企業の商品購入、すべての過程において消費税が課せられます。それに対して、アメリカの売上税はボールペンの最終消費者である個人・企業にのみ課せられるということになります。

ここで確認しておきたいのがインボイスです。インボイスには売上税がきちんと記載されているでしょうか。もし記載されていない場合は使用税(Use Tax)を別途州に納税する必要があるかもしれません。基本的に売上税・使用税の納税は最終消費した州に行います。課税されるのは最終消費者なので、購入先が売上税を徴収しない場合、使用税として最終消費者が納税する必要があるのです。

では売上税がインボイスに記載されていないというのはどういう状況でしょうか。前述の通り売上税は州ごとにルールが異なります。企業はその州での企業活動に事業関連性(ネクサス)があると、業務登録をし税務申告を開始します。このネクサスも州によって定義が異なりますが、購入先が最終消費者の州にネクサスがなく、業務登録をしていないとなると、売上税を徴収し納税する義務はないため、インボイスにも記載されないということになります。他にも何らかの理由でインボイスに売上税が記載されないことがあるかもしれませんが、購入者がこのボールペンの最終消費者にもかかわらずインボイスに売上税が記載されていない場合は、購入者に使用税の納税義務が発生します。

また、インボイスに記載されている売上税や納税先の州が最終消費した州の税率と異なる場合は、一般的に差額を最終消費した州に納税する必要があります。例えばインボイスに記載されている税金がA州への売上税 $80だとします。実際に最終消費した州はB州で税金は $100です。この場合購入者は差額の$20を使用税としてB州に納税します。

使用税が、その州で最終消費したものに課税されるとなれば、海外で購入した免税品も例外ではありません。免税品は税関で商品を海外から持ち込んだことによる税金(Duty)は免除されるかもしれませんが、州では使用税の課税対象となりますのでご注意下さい。企業の使用税は法人税申告とは別に、売上税・使用税申告をしますが、個人の使用税については、所得税の確定申告時に一緒に申告できるようになっている州が多いです。

使用税は主に州内の企業を守るために課される税金です。州内の最終消費者が、売上税がない州や国、または税率が低い州から購入することで州内の企業の売上が意図的に下がるのを防ぐ役割を果たします。しかし使用税は『自己申告』の性質が強いため、州が税金を確実に徴収するのは難しいのが現状です。そのため州は他州や税関から売上情報を収集したり、使用税の監査を行ったりしています。州からの使用税請求は、未納の使用税のみならず、罰則と利子も課されてしまうため、多くの州が通知が来る前に自発的に使用税を納税するよう勧めています。この際にぜひ貴社が最終消費者となる購入品のインボイスや海外で購入した免税品のレシートを確認してみてはいかがでしょうか。

*州・地方税やネクサスはそれぞれの州・管轄によってルールが定められていて、とても複雑です。税率はもちろん課税対象品やサービスも州や地方によって異なるため、この記事は多くの州が起用している一般的ルールをもとに作成しています。

記事に関するご質問は、柴原 舞([email protected])まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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