タックスシーズンの到来です。読者のみなさんのお宅にもW2や1099フォームなどが届いている頃でしょう。あなたはTurboTaxを使いますか、それともH&R BLOCKでしょうか?周りに尋ねてみると、高い確率でこの二つのどちらかが返答されると思います。それもそのはず、このふたつでマーケットシェアは90%となるのですから。

1.TurboTaxのシェアは7割、H&R BLOCKは2割

 https://secondmeasure.com/datapoints/tax-prep-2021-turbotax-hrblock-blucora/

このBloomberg Second Measure統計は、タックスソフトと小売店の売上データを示していますので、会計事務所の情報は含まれません。緑バーの推移をみていただくと、「TurboTax」は確実に競合他社からシェアを拡大中で、逆に「H&R BLOCK」のシェアは減少傾向であることが分かります。すると、ここに入らない「会計事務所」は、いったい皆さんにとってどのような位置づけなのでしょうか?

「会計事務所」には、どうも敷居の高いイメージがあるようです。また、どのようなサービスを受けることができるのかよく分からない、といったこともあるようです。であるのなら、どんな人に会計事務所が合っているのかを知ることで、より具体的にイメージできるかもしれません。次のBusiness Insiderの診断チャートをご覧ください。

2.「プロを雇う」と「オンラインで自己申告」、あなたはどちら?

https://www.businessinsider.com/personal-finance/should-i-do-my-own-taxes-or-hire-accountant

矢印通りに進むと、多くの方は、「Prepare and file your own taxes online(オンラインで自己申告)」に辿り着いたのではないでしょうか。このタイプに当てはまる人は、例えば、W2(いわゆるサラリーマン)がメインの収入源で、投資は401(k)やIRAを基本としており、ライフステージが安定している層(結婚、離婚、子供が生まれたなどのライフイベントのないステージ)、つまり、ご自分の申告内容を「至ってシンプル」と表現される人が代表的です。

一方、 そのシンプルな申告に当てはまらない人、例えば、不動産売買、個人年金以外の投資、W2以外の収入源や副業あり、ビジネスオーナー、最近ライフスタイルに変化があった(結婚、離婚、子供が生まれた)ことで申告内容が複雑であり、そうなるとタックスソフトが対応していないこともあり、プロに依頼するというのが代表的なパターンでしょう。

この二つのタイプを比較してみると、自分はやはりオンラインで自己申告が適切であろうと再確認されるかもしれません。

が、ここで待った!をかけたいのが今回の記事の趣旨です。なぜならば、上記の「至ってシンプルなライフスタイル」を送っているあなたが、アメリカにおいて必ずしも「至ってシンプルな納税者」とは限らないからです。もっといえば、あなたのようにアメリカに住む日本人の多くは、アメリカと日本の両国の税法や移民法に影響を受けるクロスボーダーの納税者であり、ビザを持ち、日本に銀行口座を保有し、日本からの年金、贈与や相続を受けるでしょう。

実は決して“普通でない”クロスボーダー生活者である日本人がTurboTaxやH&R BLOCKを利用するときには、十分に注意しなければなりません。代行サービス店の担当者が本当にご自分のステータスを理解してくれているのか、本当にタックスソフトには自分の要件を網羅するすべての申告フォームが搭載されているのか。でも、その確認をどうやってするの?そこに会計事務所の一つの役割があります。

TurboTaxは素晴らしいテクノロジーを搭載したソフトであり、私も常日頃から感心させられています。それだからこそ、この未来につながる素晴らしいテクノロジーの恩恵にあずかりながら、くる年もくる年もタックスリターンとお付き合いしていかなくてはならない日米クロスボーダー生活者は、その特異な税務事情に精通する会計事務所を、自分の“税の家庭医”のように携えておくことは価値のあることのように感じられます。

3.税の家庭医、会計事務所の上手な使い方

最後に、私のお勧めする、タックスソフトと会計事務所のダブル使用の仕方をご紹介します。

  1. 自分で今まで行ってきたタックスリターンが正しいかどうか分からない、という場合は、1年だけ会計事務所を使って間違いのないタックスリターンを作ってもらい、それを参考にして次年度から自らタックスソフトでやってみる。
  2. ライフイベントに大きな変化(ビザが変わる、転職、結婚、離婚、扶養家族が増える、単身赴任など)がなければ、そのままタックスソフトを使っておき、ライフイベントがあった場合には会計事務所を使って正確な申告を行う機会を作る。
  3. 時間がない、時は金なり、の場合は、会計事務所に即お願いする。
  4. 日本での相続や贈与があった年は、迷わず会計事務所にお願いする。
  5. 向こう数年間の計画(相続や贈与の計画、ビザ変更計画、グリーンカードの破棄、日本本帰国など)を考える際は、必ず会計事務所のアドバイスをもらう。

記事に関するご質問は、ハラー基江[email protected]まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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