グリーンカードをお持ちで米国法人に勤務されていた方が帰国されて日本法人に勤務しグリーンカードを放棄される方もいらっしゃるかと思います。しかし、もしかするとその方が米国支社に出張される機会が出来るかもしれません。日本からの出張者が一年間の半分以上、183日以上米国に滞在した場合居住者として米国で課税されることをご存じの方もいらっしゃると思います。しかしこの183日ルールが実は二つあることをご存じでしょうか。

<米国税法上の実質滞在テスト>

実質滞在テストによって居住者判断をする場合は、申告対象年度に31日以上滞在し、当該課税年度を含む3年間の滞在合計が183日を超えると居住者と見做されます。

計算方法:

(当該年度の滞在日数)+(前年度滞在日数の1/3)+(前々年度の滞在日数の1/6)

例として当該年度93日、前年度180日、前々年度180日滞在の場合;

(93)+(180/3)+(180/6)=183日

<日米租税条約第14条>

  • 一方の締約国(例として日本)の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内(例として米国)に於いて行われない限り、当該一方の締約国(日本)に於いてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内(米国)に於いて行われる場合には、当該勤務から生じる報酬に対しては、当該他方の締約国に於いて租税を課することができる。
  • 1の規定にかかわらず、一方の締約国(日本)の居住者が他方の締約国内(米国)に於いて行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げる要件を満たす場合には、当該一方の締約国(日本)に於いてのみ租税を課することができる。
  • 当該課税年度に於いて開始又は終了するいずれの12か月の期間においても、報酬の受領者が当該他方の締約国内(米国)に滞在する期間が合計183日を超えないこと。
  • 報酬が当該他方の締約国(米国)の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われること。
  • 報酬が雇用者の当該他方の締約国内(米国)に有する恒久的施設によって負担されるものでないこと。

 

こちらは日米2国間で定められたルールで、カレンダー上の1年365日ではなく、いかなる365日間においても183日以上滞在した場合、米国での確定申告義務が発生すると決められています。

このルールで183日を超えて確定申告の義務が発生した場合、上記の米国税法上の実質滞在テストで居住者としてその期間の全世界の収入を申告するか、非居住者として米国源泉所得のみを申告するかを判断することになります。(カッコ内の国名および下線は筆者が挿入)

<注意>

日米租税条約第14条(2)(b)(c)の規定により、もし米国法人が出張者の給与を直接支払ったり、宿泊代や交通費を負担したりした場合は非居住者であっても米国での申告義務が発生します。

以上

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