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国民年金をまじめに支払ってきたために、年金生活者の受け取るソーシャルセキュリティベネフィットが年金の半額まで減らされてしまう事実を知っていますか? 年間60万円以上のもらえるべき年金がもらえていない事実を理解して、この誤適用を是正しましょう。
1.WEPとは
WEPとはWindfall Elimination Provisionの略で、米国のソーシャルセキュリティ(以下“SS”)の仕組みのなかのひとつの規定です。これは米国のSS制度が低所得者省が優遇されるセイフティネット的な側面があるのを反映しています。比較的短期間の米国年金加入者が年金計算上有利になってしまい、さらに海外の年金も受け取るので、いわゆる「棚ぼた」状態になり、その状態を公平に使用とする制度です。
具体的な仕組みは、SSのベネフィット受給者のAverage Monthly Wageの最初の$960が通常だと90%保障されるのが、SSの対象になっていないWageをもらっていた事実があるとわかると、この90%が最高で40% まで減少されることにより、受給者のSSベネフィットが減らされます。(下図参照、注意:あくまで一例で、数字が毎年変わります。)
簡単に言うとSSオフィスにSSベネフィットを申請したときに、日本で公的年金を受け取っていることがわかるとSSベネフィットが減らされます。減額の上限が外国の公的年金の半額があります。
2. なぜ国民年金は対象外なのか?
WEPの目的は、SSの対象外の所得を得ることによりSSベネフィットの不公平をなくすことにあります。つまりSSの対象外の所得を得ており、そこで年金を積み立てていた人達を対象にしているわけです。厚生年金は所得に対する年金ですので、こちらに該当します。しかし国民年金は所得に対する年金ではなく、毎月一定額を支払い将来年金をもらう仕組みです。あきらかにWEPの意図とは異なります。
さらに欧州7ケ国も厚生年金と国民年金のセットに似た年金制度があり、これら7ケ国の国民年金的な年金はWEP上では除外対象としてリストされています。
また、ある人がSSのサービスセンターに問い合わせたところ、そのサービスセンターの回答も国民年金はWEPの対象外だと思うというものでした。
どうやら、この問題は国と国とのコミュニケーションの様相があります。日本政府が米国政府に国民年金の仕組みをしっかり説明してくれたらと思います。
3. Nenkin Support Center of Americaの設立
この国民年金のWEP誤適用の問題は東京で「海外年金相談センター」を主宰している市川俊治さんが、是正しようと、地道に個人レベルで活動されてきました。しかし、個人の力では効果がないと感じられた市川さんの働きかけで、サンディエゴのガラスキー秀子会計士とシカゴの筆者が賛同して協力を申し出ました。
個人の活動から次のレベルにするために、クラウドファンディングを開始して、NPOを目指しているカリフォルニア法人も設立しました。クラウドファンディングで活動資金を集め、法人格を持つことでさらに影響力、交渉力を強めようと計画した結果です。
まだたった3人の組織ですが、一緒に活動してくれる仲間を探しております。ボランティアで手伝ってくれる人を全米に、そして日本の主要地域に探しております。ぜひこの運動に賛同していただける人は、ご連絡してください。
またクラウドファンディングは3000円からサポートができます。
年金生活者あるいは将来年金生活者になられる方は多数おられて、今この問題に直面している方のご心痛、不安は計り知れません。この問題を放置しておくわけにはいきません。皆様、ぜひご協力をお願いします。
CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。
この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。
おこの記事に関するご質問はお気軽に藤本光まで。[email protected] YouTubeでも同じ内容を説明しています。 CDH会計事務所で検索してみてください。