会社は財務諸表監査を受けているが、監査人は具体的にどのような点に着眼して監査を行っているのだろう?と思われたことはございませんでしょうか?監査では「経営者の主張、アサーション」を重要視しており、このアサーションを基に監査作業を行っています。監査は経営者の主張を検証する作業です。たとえ財務諸表を作成するのが経理担当者であったとしても、最終的には財務諸表は経営者の主張であると考えれられており、特に在庫の引当金や貸倒引当金等、不確定な項目に関しては経営者の判断が必要になります。このアサーションを知ることで監査を受ける際、監査人の目線を知ることができ、日常業務及び決算の締めに役に立ちます。
アサーションの構成要素と具体例
アサーションは6つの要素で成り立っています。この6つの要素について具体例を挙げながら説明いたします。
- 実在性 (Existence and Occurrence):資産や負債が実際に存在しているか?
財務諸表に記載されている売掛金は架空に計上されていれば、売掛金は実在しないことになります。これに対応するため、監査人は売掛金が実在しているかを確認するための作業を行うことになり、この作業が売掛金の確認状です。顧客先に売掛残高が顧客の残高と一致しているかを確認するため、監査人が売掛金の確認状を送ります。実在性は資産の監査において重要とされていますが、特に売掛金は売上に関するものであることから実在性が最も重要なアサーションとされています。
- 網羅性 (Completeness):計上すべき資産・負債・取引・会計事象などをすべて記録しているか?
実際に発生した費用は財務諸表に買掛金として記帳されている必要があります。この網羅性は負債勘定科目で非常に重要とされています。なぜなら監査上、経営者は負債を少なく見せたいと考える傾向があるため、発生している負債が帳簿に負債として記帳されているかどうかの監査作業を行い、網羅性を確認します。
- 権利と義務の帰属 (Right and Obligation: 計上されている資産に対する権利および負債に関する義務が会社に帰属しているか?
財務諸表に記載されている固定資産は会社が所有している必要がありますし、銀行預金も会社の口座である必要があります。よって監査では土地や建物の購入契約書を確認したり、銀行に残高確認状を送ったりします。
- 正確性及び評価の妥当性(Accuracy and Valuation): 資産および負債を適切な価格で計上されているか?
在庫の帳簿金額は会社が決定した評価方法(先入先出法、移動平均法)に基づいて計算され、正しく反映されているか、在庫の引当金は経営者が妥当な基準を用いて計算、そして計上されている必要があります。
- 期間帰属の適正性(Cutoff):取引や会計事象が正しい期間に記帳されているか?
例えば、決算日まで出荷された商品の売上(出荷基準で売上が計上される場合)を翌月に計上した場合、売上が正しい期間に計上されていないことになります。監査人はこのカットオフを非常に重要視しており、特に売上や仕入、経費が正しい期間に記帳されているかを重点的に監査します。これは経営者が会社の業績をよく見せるために利益操作を行っていないかを確認するためです。例えば今期に発生した経費であっても、実際の帳簿への計上は翌期に行うことによって今期の利益を大きく見せることが可能です。また、決算において期末近くに発生した取引を計上することによってその期の正しい利益が決まりますので決算において、このカットオフが正しく処理されているか決算では特に注意する必要があります。
- 表示の妥当性(Presentation and classification):財務諸表に記載されている項目が適切に分類され、表示されているか?
例えば長期借入金がある場合、決算日から一年以内に返済予定の借入金は流動負債として表示される必要があります。また、必要な開示がされている必要もあります。こちらの例えとしては他の会社の債務保証を行っている場合、実際に会社が他社の債務を負っていなければ負債として計上する必要はありませんが、債務保証を行っている旨は開示する必要があります。
これらのアサーションを理解して日常及び決算業務に取り込むことで監査上での指摘事項も減り、監査作業もよりスムーズに進むことで経理担当者の負担軽減にもつながります。監査に関しましてご質問等ございましたらCDH会計事務所の中尾 [email protected] までお問い合わせください。