IRSの監査は、多くの人にとって深刻なストレスとなる可能性があります。IRSがあなたの申告書を監査対象として選ぶ可能性が高まるとしたら、それはどのような申告書なのでしょうか?監査対象の可能性が高まる19項目を取り上げている興味深い記事をご紹介します。ご自分に当てはまる項目がある場合、申告書提出前に入力情報に誤りがないか、しっかりと確認して正確な税務申告書を提出してください。
1.監査対象の可能性が高まる19のレッドフラッグ
まずは19項目をご紹介します。
「19 IRS Red Flags: What Are Your Chances of Being Audited? 」
https://www.kiplinger.com/taxes/tax-returns/602068/irs-audit-red-flags
- 1099やW-2の数字と課税所得が不一致
- 富裕層やLLC、パートナーシップなどの事業収入がある
- 必要な納税申告書を提出しない
- 収入に比べて控除、損失、クレジットが不釣り合いに多い
- 慈善寄付額が収入に比べて不釣り合いに大きい
- 多額の収入のある個人事業主や現金集約型のビジネスを経営している
- 趣味の損失を報告しながら他の収入源から多くの収入を得ている
- スケジュールSEを提出しない、自営業税を支払わない一部のLimited Partner、LLC
- 本業が不動産業ではない家主が賃貸損失を報告している
- American Opportunity Tax Creditを申請している
- 健康保険料の税額控除 (Health Premium Tax Credit) を誤って報告している
- IRAや401(k)から早期支払いを受け取る
- 慰謝料の控除 (Alimony Deduction) を受ける
- ギャンブルの賞金を報告しない、または、ギャンブルの損失を報告する
- 外国勤労所得控除 (Foreign Earned Income Exclusion) の申請をする
- マリファナ事業を運営している
- R&Dクレジット (Research and Development Credit) をとる
- ビットコインなどの暗号資産やデジタル資産取引を行っている
- 米国外の銀行口座を報告しない
2.高額所得、収入と損失の不釣り合い、控除やクレジットをとっているなど
総じて、IRSの監査対象となりやすい納税者は、「高額所得者」や「ビジネス所有者・自営業者」だと言えば、納得される方も多いでしょう。「高額所得者」は、一般的に税金を複雑にすることが多く、誤った計算や報告が生じる可能性が高まります。また、「ビジネス所有者や自営業者」は、収入や経費を計算する際に誤りが生じる可能性があるため、監査の対象になりやすいです。「不動産投資」をしている場合も対象になりやすいです。
一方で、収入に比べて「控除、損失、クレジット、事前寄付金」などの額が「不釣り合いに多い」場合も、監査の対象になりやすいです。
暗号資産・デジタル資産取引、現金集約型ビジネス、マリファナ事業、ギャンブル収入・損失のある場合、そして、特定の控除やクレジット(慰謝料、健康保険料、外国勤労所得、R&D、American Opportunity Tax Creditなど)をとっている場合、さらに、IRAや401(k)の早期支払いを受けている場合も、監査の可能性が高まるとされています。
3.米国外に銀行口座のある納税者
日米クロスボーダー生活者が忘れてならないのは、「日本を含めた米国外に保有する銀行口座などの金融口座」の報告です。この報告をしない場合に監査対象の可能性が高まるとされています。
よく間違えやすい点として、FBAR (Report of Foreign Bank and Financial Accounts) という名称から、「銀行口座」だけを報告すればよいように誤解されることが多いようですが、銀行のみならず、証券口座、保険口座なども報告対象ですので注意が必要です。また、保有資産額が多い場合はFBAR($10,000以上の残高がある場合)だけでなく、Form 8938 (Statement of Specified Foreign Financial Assets)を使っての報告も必要になる場合がありますので、要注意です。
IRSが米国外の口座について特に関心を持っているのは、タックスヘイブンと呼ばれる国(シンガポール、スイスなど)に口座を保有している納税者といわれており、これらの外国の銀行に口座情報を開示させることに成功しています。IRSは、各国の金融機関に直接口座情報を開示させるための法律を作っています。日本はタックスヘイブンの国ではありませんが、口座の報告を怠ると、厳しいペナルティがかせられることがあります。ですので、そのような口座がある場合は、2023年4月18日までに電子申告書を提出してください。
IRSは、米国外金融資産、暗号資産・デジタル資産に関して専門チームを立ち上げ、AIを駆使してパターン解析をし、無申告所得、マネーロンダリングを取り締まる取り組みの一環として、口座を持っていると思われる人々に手紙を郵送しているとのこと。これらの含めて、過去に未払いの税金や、報告漏れがあったために修正申告をしたことがある納税者も、注意をしてください。IRSは納税申告に誤りがあった納税者を対象に、監査することもあるからです。
最後に、テクノロジーが進化している今は、市販のタックスソフトフェアはとても使い勝手がよく、手軽にタックスリターンが作れるようになりました。ユーザーフレンドリーだからこそ、スイスイと作業がはかどり嬉しいことなのですが、出てくる質問ひとつひとつをじっくりと読んで理解したうえで入力していただくことがご自分の身を守ることにも繋がります。是非、ある程度のまとまった時間をかけてタックスリターンをなさってください。
参考文献
https://www.kiplinger.com/taxes/605107/new-irs-agents-and-the-inflation-reduction-act
https://www.kiplinger.com/taxes/tax-returns/602068/irs-audit-red-flags
https://www.gao.gov/products/gao-22-104960
記事に関するご質問、記事に取り上げてほしいというトピックがありましたら、Haller基江[email protected]まで。CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解していただく目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ずエンゲージメントレターを交わした上で税務・法務などの専門家に相談をしてください。
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