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米国の遺産を日本で相続したときに起きる潜在的な問題点を事前に理解してもらうために、こちらの記事を書きました。
米国ではUnified Creditという贈与税と相続税が一体化した巨額な非課税枠があります。そのために殆どの米国居住者は、贈与税や相続税を支払う必要がありません。2022年度は、$12ミリオン余りなので、限度額を超えることがないからです。また、相続した遺産を販売しても、多額のキャピタルゲインを支払う必要もありません。それはStep Up Basisという仕組みがあるからです。この仕組みは相続して資産を受け取る場合は、受取る側(Heirあるいは相続人)のコスト(こちらをBasisと呼びます)は、お亡くなりになられた方(Deceased)の死亡時の時価(Fair Market Value)になるからです。つまり含み益が溜まっている不動産や、株式などの資産は、その含み益が課税されることなく、市場価値がコストとして受取る側に移動するからです。贈与の場合は、残念ですが、贈与者の購入価格がそのまま受贈者のコストになります。Step Up Basisが使えるのは相続の場合だけということですね。しかし相続してすぐに販売してもキャピタルゲイン税を支払う必要がないのです。
さて日本の居住者が上記の想定で米国の資産を受け取った場合と対比してみましょう。まず日本は、相続人(Heir)が相続税を支払います。米国と逆ですね。また相続税の支払いをしないといけないので、資産を現金化するケースが多いと思います。さて、日本の相続税の控除額は、米国に比較しておそらく40分の1程度くらいです。日本は法定相続人の数で控除額が決まるそうです。ですから、殆どの人が相続税を支払います。読者も基礎の金額が3000万円で、法定相続人一人当たりで600万円を聞かれたことがあると思います。また日本には、米国のStep Up Basisの仕組みはないそうです。したがって、相続税の支払いをするために含み益がある資産を販売すると譲渡所得税(キャピタルゲイン税)がかかります。それは、含み益全体が課税対象になる仕組みだからです。つまり譲渡所得税と相続税のダブルパンチを受けることになります。
この相続人が米国に居住していれば、これらの税金は一切発生しないのです。ではどのように対処したら良いのでしょうか? もちろん一度に解決する方法はありませんが、時間をかけてじっくり計画を立てることで日本での税金を減額することもできると思います。
第一に大切なのは、米国の資産の購入時のコストや、家などの不動産であれば、増築などのいわゆるImprovementのコストを生存時にしっかり整理しておき、日本の相続人が正しい、漏れのないコストを使えるように準備をしておくことです。株式投資などもまったく同じです。日本の相続人に米国の資産を相続させる予定の方は、気を付けないといけないですね。
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