Pandemic Effect on Accounting

コロナウイルスの感染拡大は世界中のビジネスや経済に多大な影響を与えております。本稿では、多額の有形固定資産を抱える製造業における重要な会計上の留意点となる、減損会計について解説いたします。

 

有形固定資産の減損

コロナウイルスの感染拡大によってビジネスが大きく影響を受けている企業では、有形固定資産にかかる減損損失の認識が必要かどうか考慮する必要が生じます。有形固定資産の減損テストは以下3つのステップにより行います。

ステップ1.兆候の判定

  1. 資産または資産グループの市場価格に著しい下落がある
  2. 資産または資産グループの使用されている範囲または方法について、当該資産または資産グループの回収可能価額を著しく低下させるような変化が生じたか、あるいは生ずる見込みであること
  3. 資産または資産グループが使用されている事業に関連して、経営環境が著しく悪化したかまたは悪化する見込みであること
  4. 資産または資産グループの維持にかかる費用が、取得時または建設時に予想された金額を著しく超える事象が生じていること
  5. 資産または資産グループが使用されている営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなっているか、あるいは、継続してマイナスとなる見込みであること
  6. 現時点において資産または資産グループが従来の想定耐用年数より前に売却または除却予定であること

上記の中でも多くはe) に該当することにより減損の兆候が認められるケースが見受けられます。 将来キャッシュフローを用いて兆候の判定をする際には、ビジネスの足元の状況を踏まえた上で将来予想を見直す必要が生じてきます。判定により兆候が識別された場合はステップ2へと進みます。

ステップ2.減損損失の認識の判定

減損損失の認識は、資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を上回っているかどうかによって判定します。割引前将来キャッシュフローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識し、次の減損損失の測定のステップに移ります。

ステップ3.減損損失の測定

ステップ2の判定において回収可能性が低下し、減損損失の認識が必要があると判定された資産または資産グループについては、帳簿価額を公正価値まで減額し、当該減少額を当期の損失として計上します。公正価値とは、資産または資産グループの市場で売却する際の価値であり、市場価格が存在しない場合は将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて計算されます。その際、将来キャッシュフローの見積もりはビジネスの足元の状況を踏まえた上で見直す必要なため、以前に減損損失を計上した後に業況が悪化した場合は追加の減損損失の計上が必要となる点に留意が必要です。