12月決算の会社は12月に入り期末近くとなり、12月の終わりや1月初めに棚卸を行う会社も多いかと思います。そこで今回は棚卸の重要性についてお考えていただく良い時期かと思いますので、棚卸を行う目的、そして方法についてお話させていただきます。

棚卸の目的

棚卸とは会社や顧客先、店舗の施設内に保有している商品や原材料の数量や状態を調査することです。調査においては、工場や倉庫などに保管されている商品や原材料などを種類ごとに一つ一つ目視で確認します。

すべての在庫を数えるということは会社にとって非常に時間や手間がかかる作業であり、従業員への負担も大きくなります。それでもなぜ棚卸を行う必要があるのでしょうか?

棚卸の目的は 主に下記となります。

  • 帳簿上の在庫数量と実際の在庫数量との照合:入出庫を正しく把握、記帳していれば帳簿の在庫数量は正しいはずですが、入力ミスや在庫の破損や紛失などによって帳簿と実際の在庫数量が異なることがあります。

 

  • 在庫の状況確認:在庫一つ一つを目視することにより在庫の破損や陳腐化を把握でき、破棄すべき在庫があるかどうか、今後も保有しておいてよい在庫かどうかを確認することがでます。

 

  • 決算期末日の在庫数の確定:上記1と2により、帳簿上の在庫数量を確定することができます。在庫は会社の財産の一つである重要科目ですので適切な在庫数量を記帳することは非常に重要です。

 

  • 適切数量の把握:棚卸を行うことによって在庫過多や過少を把握することができます。

上記で棚卸が会社にとって非常に重要な作業であることがご理解いただけたかと思います。次に棚卸の実施方法についてお話させていただきます。

棚卸の実施方法

棚卸の方法には主に二つの方法があります。

  • タグ方式:タグ方式は棚卸票を使って行う方法です。この票は2枚つづりのカーボン紙で番号(あらかじめ棚卸票に番号を振っておく)、品名や型番、商品状態(原材料、仕掛品、完成品等)、数量、在庫の保管番号、担当者を記入するブランク欄が入っており、棚卸を行う従業員に渡します。また、商品が置かれている棚に番号を振っておく必要もあります。

実際に在庫を数えた従業員は棚卸票のブランクの箇所を記入し、その後棚卸票一枚を経理に渡し、もう一枚は在庫の置かれている棚に張り付けておきます。在庫のある棚に棚卸票を張り付けておくことにより、どの在庫が数えられたかが一目でわかるため、誤って二回数えてしまう、ということがなく、かつ、数え漏れがないかどうかも確認することができます。

 

その後、経理が回収された棚卸票に書かれている数量と帳簿上の数量を比較します。差異がある場合は担当者に伝え、再度数え直します。もし帳簿上では実在している商品の棚卸票が実在していない場合、実際に商品はあるのに数えられていない可能性があります。また、数え間違いが発生する可能性もあります。差異の追求終了後、必要であれば帳簿の数量を実際の数量に変更します。

 

次に、回収された棚卸票の番号が連番になっているかを確認します。連番になっていない棚卸票があれば、その棚卸票がなぜ集められていないのかを追及します。もしその棚卸票が使われていないのであれば棚卸票に「Void」と記入して他の棚卸票と共に保管しておく必要があります。

 

  • リスト方式:リスト方式は、会計ソフトから出力された在庫リストを印刷し、このリストを持って棚卸を行い、実際の在庫の数量をリストに記入していく方法です。在庫リストには数量が入っていますので、数えながら在庫表にある数量と実際の数量の差異を把握することができるメリットはありますが、デメリットもあります。在庫リストにはすでに数量が入っていますので、従業員が実際の数量は確認ぜず、在庫リストの数字そのままを記入してしまう可能性があります。これを避けるためにも、在庫リストには数量が入っていないことが望ましいとされています。また、リスト方式ですと、タグ方式のように在庫が 置かれている棚に棚卸票が貼られていないため、工場や倉庫にある在庫のうち、どの在庫が数え終わっていないかを把握することができません。よって、数え終わったら棚にシールを貼る、等の作業を行って、数え終わったことが一目でわかるようにしておく必要があります。

 

数え終わったら在庫リストは経理に渡し、1と同様、在庫リストにある数量と帳簿の数量を比較し、帳簿の数量を実際の数量に変更します。

また、1、2とも棚卸を行う前にはあらかじめ具体的な棚卸手続きを文書化し、従業員とミーティングを行っておくことも重要です。

ここまでは主に在庫の数量について述べてきましたが、上記、棚卸の目的2や4の在庫状況の確認も非常に重要です。販売できないと考えられる在庫がないか、陳腐化している在庫はないか、処分すべきか、それとも処分せずに帳簿上の在庫の金額を減らす引当金を計上する処理を行うべきかを検討する必要があります。また、在庫過多になっている場合、顧客からの受注見積もりが間違っていたかもしれませんので、なぜこのような状況になったのか、また在庫過少の場合は今後の需要を考えて最低どれだけの在庫を保管しておくべきなのか、も検討する必要があります。これら検討には判断が必要となり、非常に難しい作業です。

このように、「棚卸」と一言でいっても行う作業範囲はかなり広く、従業員全員が重要作業ととらえて作業を行う必要があります。また、棚卸を行ってから年度末の締めまであまり時間がない場合も多く、棚卸調整の作業は非常に時間がかかるため、棚卸調整作業も含め、あらかじめ適切な決算スケジュールを組むことが重要です。

CDH会計事務所では棚卸手続きのアドバイスや文書化、また実際に棚卸に立ち会って適切に棚卸が行われているかどうかをチェックするサポートを行っております。こちらのサービスに関してご興味やご質問がございましたらお気兼ねなくCDH会計事務所の中尾([email protected])までお問い合わせください。