毎年6月は、「プライド月間 (Pride Month)」です。2024年3月14日に、札幌高等裁判所と東京地方裁判所がそれぞれ同性婚を認めない現行法が違憲であるとする判決を下しました。これは、日本における同性婚の法的承認に向けた大きな一歩です。これにより、政府は同性婚を合法化するための具体的な法的措置を講じる必要性が強調されています。この記事では、同性婚の課税に焦点を当てて執筆します。

世界で初めて同性婚を法的に認めた国は、2001年のオランダ。この記事を執筆している時点では37か国で同性婚が認められています。アメリカでの合法化は2015年6月26日、世界で19番目でした。2024年5月31日にバイデン政権は「2024年のレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア、インターセックス(LGBTQI+)**プライド月間に関する宣言」を出し、LGBTQI+コミュニティの功績を認識し、米国民の多様性を称え、誇り(プライド)の旗を高く掲げるよう呼びかけました。

 

日本における同性婚に対する課税の現状

日本では2023年6月23日に「LGBT理解促進法」が国会で成立、施行されました。この法律はLGBTに対する理解を促進し、不当な差別を防ぐことを目的としています。多くのLGBT権利団体と市民がこれらの動きを支持しており、同性婚の合法化と差別禁止の法整備を求める活動が活発化しています。

法案は、すべての国民が指向や自認に関わらず基本的人権を尊重されるべきとしていますが、包括的な差別禁止法には至っていません。各種自治体では同性カップルに対するパートナーシップ証明書の発行も行われており、2024年5月13日時点で、導入自治体は少なくとも458ですが、これは法的な結婚と同等の権利を提供するものではありません。

現時点では、日本は法的に同性婚を認めていないため、税法上も同性婚カップルには異性婚の夫婦に適用される税制優遇措置が適用されません。扶養控除、相続税、社会保険などにおいてこれらの違いがみられます。

米国の歴史的背景

米国の課税において、 LGBTQI+に関する動きはこの10年で大きな変化を見せました。全国的に同性婚が合法化される以前の米国では、LGBTQI+の人々は、複雑でしばしば差別的な課税環境に直面していました。2013 年以前において、同性カップルは、たとえ州で法的に結婚していたとしても、連邦においては、“結婚は 1 人の男性と 1 人の女性の結合である”と定義する結婚防衛法 (DOMA: Defense of Marriage Act)”により、合算申告での共同連邦税申告書 (Federal Income Tax Return)を提出できませんでした。

ここで出てきたのが2013年の*United States v. Windsor*での最高裁判所の判決です。この判決はDOMA の重要な部分を無効にし、法的に結婚した同性カップルが共同連邦税申告書を提出することを可能にしました。この判決が転換点となり、同性カップルの連邦税の取り扱いは異性カップルの取り扱いと一致させることになります。そして、 2015 年、最高裁判所の *Obergefell v. Hodges* 判決により、同性婚が全国的に合法化され、異性婚と同性婚の取り扱いに関する一致は、さらに確固たるものになりました。

同性カップルの米国税務上の取り扱い

Obergefell(2015) 判決以降、法的に結婚している同性カップルは、連邦税の目的で異性カップルと同じ扱いを受けます。これには以下が含まれます:

  • 申告ステータス: 結婚した同性カップルは、異性婚カップルと同様に、共同申告または個別申告することができる。
  • 標準控除と税率区分: 共同申告者は、通常、より高い標準控除とより有利な税率区分の恩恵を受けることができる。
  • 贈与税と相続税: 同性配偶者(米国籍)は、配偶者控除を活用して、連邦贈与税または遺産税を負担することなく、無制限の資産を互いに譲渡することができる。
  • 扶養家族請求: 同性カップルは子供を扶養家族として請求し、さまざまな税額控除や控除を受けることができます。
  • 医療および退職給付: 同性配偶者に雇用主が提供する医療給付は課税対象ではなく、同性配偶者は退職給付を相続する平等な権利を有する。

州税制の違い

米国では、連邦税制は全国で一貫していますが、州税制においては異なる場合があります。ほとんどの州は連邦ガイドラインに従っていますが、考慮すべき微妙な違いがあります。

  • 共同財産州 (Community Property): カリフォルニア州やテキサス州などでは、夫婦の財産は共同所有として扱われ、州税の目的で所得が報告され課税される方法に影響します。
  • 州固有の免除および控除: 一部の州では、居住州に応じて同性カップルに異なる影響を与える可能性のある独自の税額控除、控除、免除があります。

その他の考慮事項

  • 申告の修正: 2013 年以前に法的に結婚していた同性カップルは、共同申告することで税負担が軽減される場合、以前の連邦税申告書を修正することを検討できる。これには時効があり、通常は最初の申告日から 3 年。
  • 養子縁組の税金計画: 同性カップルは、子供を養子に迎える際に特有の課題に直面することがあり、養子縁組税額控除はこれらの費用の一部を相殺するのに役立つ。資格要件と、この控除を最大限に活用する方法を理解することが重要。
  • 社会保障給付: 2015 年以降、同性配偶者は社会保障に基づく配偶者給付および遺族給付を受ける資格がある。これは、LGBTQI+の人々の退職計画と経済的安定に大きな影響を与える可能性がある。
  • 健康保険: 医療費負担適正化法/オバマケア (ACA: Affordable Care Act) は、同性カップルが利用できる健康保険料の税額控除など、さまざまな給付を提供している。これらの控除の資格と適用方法を理解することは重要。

おわりに

米国におけるLGBTQI+納税者に対する課税の状況は、過去 10 年間で大幅に進化し、法律の下での公平性と認知度が向上しました。ただし、州レベルでの微妙な差異や独自の財務計画の考慮事項は残っています。LGBTQI+納税者が財務上のベネフィットを最適化するには、連邦税法と州税法の両方について常に情報を得ることが不可欠です。

**本記事では、日本における表現を2023年6月23日成立「LGBT理解促進法」でのLGBTで統一、米国における表現を2024年05月31日での宣言上のLGBTQI+で統一。

参考文献

日本弁護士連合会 ” 札幌高等裁判所判決を受けて同性の当事者による婚姻の速やかな法制化を求める会長声明” https://www.nichibenren.or.jp/document/statement/year/2024/240410.html

NHK “”同性婚認めないのは憲法違反 札幌高裁 2審での違憲判断は初https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240314/k10014390391000.html

内閣府「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(令和五年法律第六十八号) 施行日: 令和五年六月二十三」日https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=505AC1000000068

日経ビジネス『LGBT法とは? 成立までの複雑な経過とその背景を振り返る』2023.6.21 https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00081/050900551/

公益社団法人Marriage for All Japan 世界の同性婚 https://www.marriageforall.jp/marriage-equality/world/

一般社団法人 日本LGBTサポート協会 パートナーシップ宣誓制度https://lgbt-japan.com/partnership/

VOGUE WORLD PARIS “6月はプライド月間! LGBTQIA+コミュニティのために、今日から始められる5つのアクション” https://www.vogue.co.jp/article/pride-month-facts-and-actions

WIKIPEDIA https://en.wikipedia.org/wiki/Same-sex_marriage

アメリカ大使館公式マガジン『アメリカンビュー』” バイデン政権、史上最多のLGBTQI+を政府関係者に任命” https://amview.japan.usembassy.gov/biden-administration-appoints-record-number-of-lgbtqi-officials/

Defense of Marriage Act (DOMA) https://www.law.cornell.edu/wex/defense_of_marriage_act_(doma)

United States v. Windsor: https://www.oyez.org/cases/2012/12-307

Obergefell v. Hodges: https://www.oyez.org/cases/2014/14-556

THE WHITE HOUSE “A Proclamation on Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer, and Intersex Pride Month, 2024” https://www.whitehouse.gov/briefing-room/presidential-actions/2024/05/31/a-proclamation-on-lesbian-gay-bisexual-transgender-queer-and-intersex-pride-month-2024/#:~:text=BIDEN%20JR.%2C%20President%20of%20the,Queer%2C%20and%20Intersex%20Pride%20Month.

Human Rights Watch “Japan Passes Law to ‘Promote Understanding’ of LGBT People” https://www.hrw.org/news/2023/07/12/japan-passes-law-promote-understanding-lgbt-people

Amnesty International “Japan: Groundbreaking same-sex marriage rulings a long-awaited victory for LGBTI rights” https://www.amnesty.org/en/latest/news/2024/03/japan-groundbreaking-same-sex-marriage-rulings-a-long-awaited-victory-for-lgbti-rights/

ワシントン・タイムズ・ジャパン “バイデン政権、復活祭に「トランス認知」宣言 カトリック・共和が反発 (2024年4月3日)” https://washingtontimes.jp/2024/04/03/8727/

 

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