財務諸表監査、といえば会計士が何をするか何等かのイメージがあるかもしれませんが、会計士が財務諸表に意見を出すための作業として「レビュー」というのがあるのをご存じでしょうか?会計監査は必要ないが、やはり会社の財務諸表に大きな間違いがないかをチェックしたというレポートが欲しい、監査は費用も高いし時間もかかってしまうが、もう少し費用が低くて時間も短縮でき、かつ会計士が発行したレポートが欲しい、とお考えの場合は、財務諸表レビュー業務を受けられるのがよいかもしれません。今回は財務諸表レビューについて説明させていただきます。

財務諸表レビューは監査より実施される手続きが限定されているものの、監査同様に財務諸表に保証を与えるために行う業務です。監査は会計士が証拠資料を入手して帳簿の数字と突合したり、外部から確認状を入手したり、棚卸に立ち会ったりしますが、レビューは監査と違い、監査のような証拠資料は入手せず、会社の経営者や経理担当者への質問及び財務数値の分析を行い、財務諸表が大きく間違えていないかを確認する作業です。レビューでは証拠資料を確認する等の詳細な検証を行わないため監査とは保証水準が異なり、監査より低い保証水準(限定的保証)となります。

監査報告書には、会社の財務諸表はすべての重要な点において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して適正に表示されている(適正意見の場合)と記載されますが、レビュー報告書には、会社の財務諸表は会社の財務諸表が一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して財務諸表が適正に表示していないと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなかった、と記載されます。監査報告書では重要な点において財務諸表は適正に表示されている、と書かれているのに対して、レビュー報告書では財務諸表が適正に表示されていないと信じさせる事項がなかったという表現になっており、監査報告書のように肯定的な表現ではないのがわかります。また、レビュー報告書にはレビューは監査より限定された手続が行われていることも別途記載されます。

監査ほどの詳細な数字の検証は行われませんが、会計士は財務諸表が米国会計基準に基づいて作成され、大きな間違いがないかどうかを検討するため、かなり多くの質問と分析を行います。また、質問や分析を行った結果、重要な誤謬が発生していると考えらえる場合にはまた追加で質問や分析を行う必要があります。レビューは監査より限定された手続が行われ、報告書も限定的保証ですが、財務諸表レビューを受けることによる便益は多いにあると思います。

財務諸表が誤謬や不正により大きく間違っていないかを検証するため数多くの様々な質問や分析が行われ、この質問と分析で会計士が財務諸表にある間違いを発見することは多々あります。では、会計士は具体的にどのような質問と分析が行われるのでしょうか?

レビュー業務における質問と分析

レビュー業務における分析では主に下記のような作業が行われます。

  • 貸借対照表主要項目の増減分析
  • 損益計算書主要項目の増減分析
  • 売掛債権、棚卸資産、買掛債務回転率
  • 減価償却費が償却資産に占める割合

上記の分析を行い、変動が会計士の予想と違う、また異常な変動があると考えられる場合などには、経営者や経理担当者に質問を行い、また追加で資料を依頼して更なる分析を行います。

また、レビュー業務で行う質問はかなりの数がありますので、今回は売掛金の質問をいくつか示します。

  • 支払いが遅延している、また倒産した顧客先はあるか?
  • 売上は正しい期間に計上されているか?
  • 担保に入っている売掛金、ファクタリングをされている売掛金はあるか?もしある場合は会計原則に基づいて正しく記帳されているか?
  • 決算日後に金額の大きなクレジットメモを発行していないか?
  • 売掛金は正しく区分(短期と長期)はされているか?

上記の質問のうち、会社側の質問の回答によっては会計処理の間違いが発見されることがあります。例えば、上記4の質問に対して、期末日以降に10万ドル以上のクレジットメモを発行したと会社側が回答した場合、会計士はどのような内容のクレジットメモを発行したかを質問します。もし会社側が期末日以前に売り上げた商品の売値が間違って高く請求されてしまっており、期末日以降に売値の調整をするためにクレジットメモを発行した、と回答した場合、会計士はこの売値の調整は期末以前に行ったかどうかを聞くことになるでしょう。そして、もし経理担当者の回答が、期末日以降にクレジットメモを発行しただけで期末日前では何も調整を行っていない、となりますと、本来は期末日以前の売上は期末日までに減額する調整を行わないといけないことになり、帳簿を修正する必要があります。

上記のように、レビュー業務で行われる質問一つ一つには意味があり、会社側の回答によって会計士は誤謬がないかどうか、より多くの質問や分析を行う必要はないかどうかを考慮しながら作業を行います。

財務諸表レビューは監査より費用もかなり抑えることができ、第三者の目線から財務諸表が大きく間違えていないかどうか質問及び分析を行う業務です。間違いが発見された場合は、今後どのような点に気を付けるべきかがわかり、会社にとっては便益が大きいものと考えられます。

CDH会計事務所では数多くの日系企業様に財務諸表レビューサービスを提供させていただいております。財務諸表レビューサービスに関しましてご質問がありましたらお気兼ねなくCDH会計事務所の中尾 ([email protected])までご連絡ください。