多くの会社が日本にある親会社や日本以外の海外にある関係会社から在庫を購入されておられるのではないでしょうか?海外から在庫を輸入されると大きな輸送費が発生します。会計上では在庫購入にかかった輸送費は在庫の一部として資産計上し、在庫が販売された際に売上原価に計上される必要があります。しかし、商品を購入した際に輸送費を各商品に按分して(在庫の重さや金額等で按分)在庫の価格を算出する方法ですと、商品を購入するたびに按分計算をする必要があり、作業がかなり煩雑になります。しかし、この輸送費を各商品に按分する以外の方法でより簡素化した方法を取ることが可能で、これにより作業の効率化を図ることができます。今回は、簡素化された輸送費の資産計上計算方法及び会計処理方法を説明させていただきます。
計算方法①:発生した輸送費の仕入れ額に対する割合に基づく計算
この方法では、発生した在庫購入額を輸送費で割って輸送費割合を算出し、この輸送費割合を期末の在庫にかけて資産計上すべき輸送費を計算します。計算方法は下記となります。
- 月中では発生した輸送費はFreight in等の勘定科目を売上原価内に作り、売上原価に記帳します。
- 月末(あるいは四半期末、年度末)に、発生した輸送費を海外から購入した在庫の金額で割ります。
- 2で計算した数字を月末に残っている海外から購入した在庫に掛け、資産計上すべき輸送費を計算します。
- 3で計算した輸送費を在庫の一部として計上し(在庫とは別の勘定科目)、この調整を売上原価で行います。
下記にて例で説明します。
決算期が12月末の会社で、期中で発生した輸送費は売上原価に計上していた。1年間で発生した輸送費が$280,000で、1年間で購入した在庫が$3,500,000(在庫すべては日本から購入されたと仮定)、期末の在庫は$358,000。12月末で資産計上すべき輸送費の計算は下記になります。
1年間で発生した輸送費 | $ 280,000 | A |
1年間で購入した在庫 | $ 3,500,000 | B |
輸送費割合 | 8% | C=A/B |
期末在庫 | $ 358,000 | D |
資産計上すべき輸送費 | $ 28,640 | C*D |
仕訳は下記になります。こちらは手入力(Journal Entry)で記帳します。
棚卸資産 | $ 28,640 | |
輸送費(売上原価) | $ 28,640 |
そして翌期には上記の仕訳を戻し、また1月末には再度上記の計算を行って仕訳を記帳します。
計算方法②:在庫回転率を基に計算された在庫保管日数に基づく計算
計算方法は下記となります。
- ①と同じように、月中では発生した輸送費はFreight in等の勘定科目で売上原価に記帳します。
- 月末に在庫の回転率を算出します。在庫の回転率は売上原価を平均在庫(期首と期末、あるいは期首と月末の在庫の数字を2で割ったもの)で割って算出します。
- 在庫保有日数を計算します。在庫の保有日数は年間日数365日を2)の回転率で割って算出します。
- 発生した輸送費を期首から月末(あるいは期末)までの日数で割り、一日あたりの輸送費を計算します。
- 4)で計算した一日あたりの輸送費を3で計算した日数をかけて資産計上すべき輸送費を計算します。
決算期が12月末の会社で、期中で発生した輸送費は売上原価に計上していた。1年間で発生した輸送費が$280,000で、売上原価は$2,800,000、期末の在庫は$358,000、期首の在庫は$490,000であった場合。
売上原価 | $ 2,800,000 | A |
期首在庫 | $ 490,000 | B |
期末在庫 | $ 358,000 | C |
平均在庫 | $ 424,000 | D=(B+C)/2 |
在庫回転率 | 6.6 | E=A/D |
在庫保有期間(日数) | 55.27 | F= 365 days/E |
1年間で発生した輸送費 | $ 280,000 | G |
一日の平均輸送費 | $ 767.12 | H=G/365 |
資産計上すべき輸送費 | $ 42,400 | F*H |
仕訳は①と同様(数字は変更の必要あり)になります。なお、上記では1日あたりの輸送費を算出するのに年間日数で割って算出していますが、実際に期末からさかのぼって55日間で発生した輸送費を資産計上することも可能です。もし輸送費が大幅に高くなったり、低くなってきているようであれば上記の一日平均輸送費を使うより実際に55日間で発生した輸送費用を特定する方法の方が望ましいかと思います。
1と2の方法ですと、まだ在庫が販売されていないにも関わらず発生した輸送費を売上原価に計上しますので、違和感を感じられるかもしれませんが、在庫の一部として計上すべき輸送費を在庫に計上、つまり売上原価を減らす処理を行いますので、結果的に売上原価は販売された商品の輸送費のみが計上されることになります。この方法ですと月、四半期、年に一回(会社によっては四半期や年度末のみに輸送費の資産計上の計算をされ、在庫と売上原価を調整されることもあります)の計算のみとなり、日常的に発生する輸送費を各在庫に按分する必要がありませんので、作業時間がかなり短縮できます。
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