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今回は駐在員が知らないといけない米国税務知識を3点選んで説明します。以下の通りです:

(1,) 401(k) に加入できないなかでの、個人でのIRA・Roth IRAの利用

(2,) 日本に帰国してももらえるソーシャルセキュリティのベネフィット

(3,) 日本の退職金の米国課税の問題点とその解決法

 

1、401(k)

多くの日本企業が一般従業員向けに401(k)と呼ばれる適格年金制度を持っています。しかし滞在期間が限られる日本からの出向社員は、参加が禁止されている場合が多いようです。しかし、駐在員といえども自身のリタイア後の生活を守らないといけません。

 

IRAやRoth IRAという個人の適格年金制度が米国にはあります。出向者にもこの制度を利用することができます。まず401(k)が会社にあっても自身が拠出せず、会社からも自身のために拠出されない場合はIRAは、限度額まで参加できます。ただしRoth IRAは一定額の所得以上になりますと、参加ができません。この所得制限には注意しましょう。限度額は一人$6,000で、50歳以上になると$7,000毎年貯めることができます。夫婦の場合は、それぞれが口座を作れますので、金額はこの倍貯めることができます。IRAは税引き前の金額を拠出でき、Rothは税引き後の金額の拠出ですが、引き出し時に無税で引出せます。日本のNISAに似ているという人もいます。

 

IRAもRoth IRAも個人レベルの年金ですから、401(k)のように会社にプランを設立してもらうことは必要ありません。ひとりで金融機関に連絡したり、ファイナンシャルアドバイザーと相談して簡単にセットアップできます。一度セットアップしてしまえば、毎年小切手を書いて、口座に振り込むだけです。もうひとつの良い点は、拠出の締切が税務申告書の締切と同じなので、年が明けても設立することができます。例えば2020年度のこれらの口座は、コロナの影響で、拠出の締切が2021年5月17日になると現時点で予想されています。通常の年は翌年の4月15日になります。

 

IRAは、税引き前の金額を拠出できるので、課税所得を落とすことができます。ネットギャランティでご自身の給料が決まっている人は、この口座を作ることで、会社の税負担を減らすこともできるのです。

 

注意点としては、両口座とも59歳半を超えてから引き出さないと、10%の早期引き出しペナルティがかかることです。この年齢に届かないで帰国する場合は、これらの口座をアメリカに残しておくことになります。その際は、米国非居住者になっても口座を維持してくれる金融機関を選ばないといけません。もちろん口座をアニュイティ(個人年金)に変更したり、投資型の側面が強い生命保険などの商品に変えることもできます。帰国前にしっかりプランをしていれば、自身がリタイアを迎える際に、米国から引き出すことができ、自身の日本にあるリタイアのための資金を補完できます。これらは信頼できるファイナンシャルアドバイザーと相談しながら進めてください。

 

3、退職金の課税

日本の親会社から出る退職金は、駐在員は注意が必要です。なぜなら米国居住者の身分で日本で出た退職金を受け取ると、通常の一般所得として扱われて、普通の税率がかかってしまいます。米国の個人の税率で一番高いのは37%です。これは連邦税であり、州税まで加えると40%を簡単に超えてしまいます。

 

このような事態を避けるための対策ですが、主に3点あります。

(1) 現地子会社に負担してもらう

退職金が出るまで、米国で駐在していたのは会社の命令に基づくのであり、会社の都合のために、個人で高額の所得税を支払うのはおかしいという考え方です。ネットギャランティーでは、税金は会社負担になりますが、退職金の金額の40%というと現地子会社に取り、大変な負担になります。貰ってしまう前にしっかり、会社と交渉してもらうのが一番良いと思います。

(2) 日本に帰国するまで退職金の支給を待ってもらう

米国の非居住者になれば、米国の所得税はかかりません。一見したところ、この方法が一番安易に思えますが、現実的にはこの方法を認めてくれる会社は皆無です。おそらく日本の制度で、支払いを全面的に遅らせるのはできないからでしょう。

(3) 退職金を分割払いにしてもらう

米国にいる間は、一部分の退職金をもらい、米国で税金を払い、あとは帰国後日本でもらうといういわゆる分割払いです。この方法で米国の所得税を減らすことができます。こちらは(2)に比べれば実際に行っている企業は多いようです。

 

4、最後に

全てを会社任せにしていた時代から、これからは自分でリタイア後の生活を築く時代です。貴重なアメリカ駐在期間を無駄にしないで、合法的に、ルール上許される方法であれば、堂々と制度を勉強して、そして自身で工夫されて、ご自身とご家族のことを考えて将来の計画を立てるべきです。そのためには、これらの税務知識は必須です。

 

CDHでは米国在住の個人の税務申告作成のサービスを行う傍ら、これらの人たちのさまざまな問題点、疑問点を解決、説明すべく日々努力しております。またこれらの人たちが抱える問題は日米の税法をはじめ、移民法、生命保険、リタイアメントのルールなど複雑、多岐にわたります。

この記事は複雑な税法や、複雑な規制をできるだけ簡単にポイントだけを理解してもらう目的でお伝えしています。したがって例外もたくさんあります。実際にアクションを取る場合は、必ず税務・法務などの専門家と相談をしてください。

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